先日、the breweryというストックホルムのデジタルエージェンシーの方にお会いする機会がありました。その時に、彼らが昨年デザインを担当したあるアプリ開発集団のウェブサイトの話を聞きました。この集団の取り組みがとても新鮮で興味深いなぁと思ったので、ぜひご紹介したいと思います。

 

アプリ開発集団の名前は、toca boca。響きが可愛らしいですよね。彼らはどんなアプリを作っているかというと、iPhone、iPod touch、そしてiPad上で遊べる、子どもを対象にしたデジタルおもちゃアプリ。

昨年の3月に初めてリリースし、今では合計10個のおもちゃが揃っています。なんとこの10ヶ月間だけで、ダウンロード回数が500万回に達したとのこと!ホームページ上のFacebook Likeの数は、今34,000に近づこうとしています。

そんな彼らの作ったアプリの紹介を通して、人気の秘訣を探っていければと思います。

まず一つ目は、Helicopter Taxi。iPhoneとiPod touch用のこのアプリは、画面上に現れるヘリコプターを操縦する、というお遊び。

画面の背景はカメラのレンズが映し出しているものなので、子どもがリビングルームにいればリビングルームの中でヘリコプターが飛んでいるように見えるんです(AR技術を応用)。

ヘリコプターを操縦するには、ソファに座っているだけではダメ。おもちゃ感覚で、ヘリコプターを手に持っているかのように動き回って遊んでもらうことが目的。私がお会いしたデジタルエージェンシーの方は娘に遊ばせてみたところ、30分くらいiPhoneを手放さなかったそうです。

二つ目のアプリはToca Tea Party。これはiPadを使ったアプリで、画面上でおままごとをして遊ぼう!というもの。

テーブルクロスを選んで、お食事と飲み物を用意して…。お茶をこぼしちゃったら、ゾウキンでちゃんと拭くことができます。ティーパーティーが終わったら、最後はiPadを傾けて流しに入れて、水洗い!

三つ目にご紹介するのは、Toca Hair Salon。iPhone、iPod touch、iPadで遊べるこのアプリは、ヘアスタイリストになってみよう!というお遊び。

髪を整えて、切って、染めて、伸ばして(!)、ドライヤーかけて、出来上がり!最後にお客さんの写真を撮って保存することもできます。

この他にも7つのアプリがあるので、こちらのサイトでぜひご覧ください。

tocabocaのホームページやインタビュー情報を元に、これらのアプリの魅力ポイントを3つにまとめてみますと:

①学校教育ではなく、生活教育に注目。

学校教育をサポートするような子供向けアプリはすでに沢山あるが、純粋にお遊びに注目したアプリは少ない」とCEOジェフリー氏。そこでtoca bocaは、「お遊び」を通した生活教育に焦点を置くことにしたそうです。

なので、日常生活で役に立つこと:例えばお買い物をするお料理をする髪の毛を切る、などをテーマにアプリが開発されている、というわけです。このような切り口のアプリって、確かにあまり聞いたことがありませんよね。お医者さんごっこロボット作りなど、職業訓練の側面もあるのかもしれません。

そもそも、スウェーデン流の学校教育というのは、単なる情報の収集や知識の詰め込み型教育ではありません。得た情報をもとにいかに議論や討論ができるかという点が重要。また社会科や公民といった科目では、日常生活で不可欠かつ実用的な知識や、一市民として政治に参加するための基礎知識を学ぶことがメインです。このように、実学志向が徹底しているスウェーデンだからこそ、生活教育をベースにしたアプリという発想が生まれやすいのでしょうか。

②デジタルおもちゃは、かさばらない。

フィジカルなおもちゃというのは、やっぱりかさばりますよね。場所取りますよね。けれどもアプリだと、全てがiPhoneやiPadの中に収まる。どんなに沢山おもちゃを集めても、かさばらない!というのは面白い特徴ですね。しかも怪我する危険性もないですし!

「フィジカルなものを全て捨ててデジタルおもちゃに移行せよ!」ということではもちろんなく、子供たちにテクノロジーの面白さを伝える、というのが彼らの一つのミッションだそうです。私が子どもの頃は、「テレビゲームばっかしてたらバカになるよ!」なんて親に言われてた気がしますが、このアプリの紹介ビデオを見ていると、テクノロジーのポジティブな側面って見逃しちゃいけないよな、と思わされます。


③広告が一切無い。

恐らく多くの親が懸念することは、「広告」とか「バーチャルグッズの販売」ではないでしょうか。アプリ内で何か物を購入させたり、広告が流れたり…ということはないのか?と思われるかもしれません。

まずアプリそのものは基本的にお金がかかります(約2〜3ドル)。それは親が負担するとして、アプリを購入して以降に関しては、アプリ上で子どもが何をしようと、お金が発生することはありません。このような仕組みのほうが親の信頼を得ることができますよね。CEOのジェフリー氏もそのように指摘しています

ちなみにスウェーデンでは、子どものテレビ番組では広告を一切流してはいけない、ということが法律で決まっているんです(恐らくヨーロッパで唯一)。そのようなSwedishマインドが、このアプリにも反映されたのでしょうね。

今を生きている子供たち、そしてこれから生まれてくる子供たちは、私たちよりもっと早い段階からデジタルツールに触れることになりますよね。そこで、こういったデジタルおもちゃからまず親しんでもらう、という取り組みはとても面白いと思ったので、今回ご紹介させて頂きました。

ところで、若干話が逸れますが、私がお会いした方がデザインしたtoca bocaのウェブサイトは、iPhoneやiPadで開いた時にそれぞれの画面サイズにちゃんとフィットした形でレイアウトが自動的に調整されるようになっています。なので、iPhoneとiPad専用のモバイルサイトは存在しません。tocaboca.comというアドレス一つだけで、どんな画面にもフィットするので、便利ですよね。とてもスマートです。(Responsive Web Designと呼ばれるようです)

 


さてさて、toca bocaは今後どんなデジタルおもちゃアプリを開発してくれるのでしょうか?消費者教育や職業訓練だけでなく、政治教育の分野にも突入したら面白そうですね。目が離せない存在です。