ヒュゲリなインタビュー

【YOUは何しに北欧へ?】Vol.2:北欧と日本の架け橋を目指す明知直子さん

こんばんは、スウェーデンライターaikoです。東京は本格的に冬っぽくなってきましたが、みなさんいかがお過ごしですか?忘年会などで忙しくしていますか?私は年末年始にスウェーデンに遊びに行くので、体調管理に気を遣う日々を送っています!

さて、本日は『YOUは何しに北欧へ?』の第二弾をお届けします。

第一弾ではスウェーデンのグリーンピース(国際環境保護団体)で活躍されていたアキコ・フリッドさんをご紹介。アキコさんからは、日本の手仕事とお茶のお店をご夫婦でやられている明知直子さんをご紹介いただいたので、早速ご連絡してみたところ快くOKをいただきました!

直子さんはスウェーデン在住歴7年で、現在ストックホルム郊外の群島(アーキペラゴ)にあるインガロー島に住んでいます。それではインタビューをお楽しみください!
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1. スウェーデンに引っ越したきっかけを教えてください!

日本のインテリアショップIDÉE(イデー)にて、5年間家具販売やインテリアコーディネートの仕事に携わっていま した。イデーではいわゆる北欧ブームがくる前から、スウェーデンのデザイナーを起用してオリジ ナル家具を作ったり、北欧ミッドセンチュリーのデザインを紹介していて、日本にはファンも多いリサ・ラーソンやスティグ・リンドベリの作品も取り扱っていました。

こんなに愛らしいデザインが生まれた国スウェーデン、一体どんなところなのだろう、と思ったのが最初のきっかけです。そしてスウェーデン留学を計画していた現在の夫と出会い、結婚。将来的には北欧のデザインを日本で紹介するお店をはじめるという計画を立て、2007年、旅行でも訪れたことのないスウェーデンは北極圏の街、キルナへやってきました。2年半の留学生活でスウェーデン語と写真を学び、学校を卒業後、ストックホルムにて日本のデザインと手仕事・日本茶を紹介するお店KIKIを立ち上げました。

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2. 今はどのような活動をされていますか?

お店と平行する形で、三年前自分の会社を立ち上げました。屋号dekorで、スウェーデンをはじめ北欧の魅力を日本に伝える活動をしています。具体的には雑誌や新聞・書籍、新聞等の北欧取材のコーディネート、撮影・執筆・通訳・翻訳・バイイング、企業から依頼を受けて北欧のインテリア・デザイン・ライフスタイルなどのリサーチ、展示会の企画、コンサルティング、個人旅行の手配から企業の視察旅行のアレンジ・手配・アテンドなどを行っています。

夫婦二人とも日本人で、異国での生活は大変なこともありますが、取材や色々なプロジェクトを通じてたくさんの素晴らしい出会いがあったり、知り得なかった新しい分野の知識を得たり、行った事のない場所に行けたり、何事にも代え難い経験をさせてもらっています。そういった喜び・やりがいが次のプロジェクトや仕事への原動力になっています。

3. スウェーデンに来て仕事上で一番の苦労話(あるいはカルチャーギャップを感じたこと)を教えてください。

仕事とプライベートのONとOFFがはっきりしているのは最初に感じたことですね。三年前会社を立ち上げてすぐに手掛けたデザイン本の仕事のこと。秋に発売予定の本で春先から色々と動いていましたが、夏至を過ぎた頃から取材先のスウェーデン人が次々と約4週間のバカンス(雇用制度で保証されています)に入ってしまい、校正という印刷にまわる前の最終チェックの際、一番連絡を取りたい時に繋がらないという事態に焦ったことがあります。スウェーデン社会の洗礼を受けたような気がしましたね。

日本とスウェーデンの間で仕事をしている身としては、しわ寄せが来てツライ時もありますが、同時に、そういった働き方は潔よくてうらやましいとも思います。

4. スウェーデンに来て仕事上で一番嬉しかった話を教えてください。

アキコ・フリッドさんのように何か社会に直接貢献出来ているわけではないのですが (汗)、デザイン・インテリア好きな人の間では定評のあるスウェーデンのインテリア誌 RESIDENCE(レジデンス)で「スウェーデンを美しくするクリエイター15人」に選んで頂き、取材を受けた時は嬉しかったですね。
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5. 直子さんがスウェーデンで学んだ仕事術あるいはライフスタイルで、日本でも取り入れられそうな(あるいは日本人が見習うべき)ことはありますか?

これは私もよく考えるのですが、国の規模も違うし、辿ってきた歴史も風土も気候も違う二つの国ですから、スウェーデンでは当たり前のことでも日本ではうまく機能しないこともあるかと思います。

ですが、例えばフィーカ(スウェーデン語で「お茶をする」)の文化は日本でも取り入れられるのではないでしょうか。スウェーデンにはフィーカの時間が一日に二回あり、留学先の学校では午前中に一回、午後に一回教師も職員も生徒も学校にいるすべての人が食堂にあつまり、お茶の時間をともにしました。コーヒーを片手にシナモンロールを頂きながら、校長先生や教師も生徒にまざっていろんな話をします。

この習慣はもちろん一般企業にもあり、上司も部下も同じ場所で進行中のプロジェクトの話をしたり、色々なアイデアを出してみたり。こういった場から問題が解決されたり、新しい発想が生まれたりするそう。時間を共有するだけではなく色々なものをシェア出来るよい習慣ですよね。

ちなみに今発売中のGiorni(ジョルニ)1月号は北欧のお茶時間が特集。巻頭インタビューでストックホルムの自宅を取材いただきました。

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6. 今後の目標を教えてください!

漠然としたビジョンは、北欧と日本を繋いでいけるような仕事をしていきたい、というのはかなり大それていますが、そういったことが目標です。

私の職業は、国を動かす政治家でもないし病気の方を直せる医者でもありませんが、自分のやっていることでちょっとでも世の中が良い方向に変わったり、誰もが心地よく過ごせる社会のイメージをふっと考えられるきっかけになったり、日々の生活の中にあるなんてことない幸せに気づいたり、毎日をもっと楽しく過ごせるようなインスピレーションのカケラのようなものを感じたり。

すごく大それた発言ですが、勇気を持って申し上げると、心の中にあるのは「世の中を良くしたい」ということ。たまに日本に一時帰国するときに思いますが、北欧には日本でも実践出来るような知恵やよりよい生活を送れるためのヒントがあったり、逆に日本には世界に発信したい美意識や文化があります。そういうものやこと、人を上手く繋げていけるような潤滑油のような動きをしていきたいです。

短期の目標としては、自分で全て手がけた本を出版したいのと、スウェーデンをはじめ北欧の魅力を伝える自分のメディアを立ち上げたいです。

7. 直子さんにとって、もっともヒュゲリ(デンマーク語で「心地良い」)な瞬間はなんですか?

夜すぐに眠くなってしまうので(笑)、超朝型なライフスタイルを送っています。朝起きたらまずティーポットいっぱいにアールグレイを作って、それをゆっくり頂きながらメールチェックをしたり、その日一日をイメージしたり、考え事をして朝のひとときを過ごします。だんだん明るくなっていくのをたまに窓から眺めたりして。普段見かけないヘラジカなどの動物もまだ人間が動き出す前は、庭に遊びにきてくれるんです。綺麗な朝焼けを見るとそれだけでもう気分がいいですよね。

私の場合、ヒュゲリな瞬間は、けっこう日常の中にある気がします。親しい友人と自宅でゆっくり食卓を囲んでいる時間だったり、通勤のバスの中から眺めた群島に沈む夕日だったり。スウェーデンに来て、そういう瞬間って日々の生活の中にあるんだな、と思うようになりました。

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8. この企画は、リレー形式で続けていきます。北欧で活躍されている日本人の方をご存知でしたら、ぜひご紹介ください!

ストックホルム在住のダンサー、木田真理子さん。実はお会いしたのはまだ数回なのですが、スウェーデン王立バレエでファーストソリスト(主役級のダンサーを指す言葉)をつとめるとてもキュートな方です。

今秋大好評だった現代版ジュリエットとロミオ」のジュリエット役にも抜擢され、スウェーデンに住む日本人として本当に誇らしい活動をなさっている素敵な方で、私も頑張らなきゃ!といつも励まされます。

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いかがでしたでしょうか。

個人的には、直子さんのお話には共感できる部分がとても多く、改めてスウェーデンという国の良さに気付かされました。ストックホルムは、東京のように美味しい飲食店や娯楽がたくさんあるわけではないのですが、だからこそ何気ない日々の生活にありがたみや幸せを感じることができるんだろうなぁ、と思うことが多々あります。

日本でも、フィーカの文化を取り入れつつ、日常の中にもっとヒュゲリな瞬間を作っていきたいですね。

また、北欧の魅力を日本に伝える活動、という部分に関しては北欧ヒュゲリニュースも同じコンセプトですので、これからも直子さんの活動を応援していきたいと思います!

さて、次回はスウェーデン王立バレエのダンサーとして活躍されている木田真理子さんにインタビューしてみたいと思います。

引き続きお楽しみに!