ヒュゲリなインタビュー

デンマーク出身のグラミー賞受賞ヴァイオリニスト、マッズ・トーリングさんインタビュー inカリフォルニア(後編)

こんにちは!U.S.ゲストライターのNorieです。

お待たせいたしました。それではインタビューの後半です。

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デンマークとスカンジナビアで好きなミュージシャンはいらっしゃいますか。

はい、スウェーデン人のピアニストで私が子供の時から聴きながら育ったラーシュ・ヤンソンです。とっても素晴らしい演奏者です。彼の音楽を説明するのに一番良い描写は、“誰かがノルウェーのどこかの山のてっぺんから演奏している感じ”ですね。彼の音楽には美しくて開かれた音があります。

ノルウェー出身のキース・ジャレットと共演したサックス奏者のヤン・ガルバレクからも影響を受けています。彼がこの北欧のジャズスタイルを作りました。

そして、“I skovens dybe stille ro”(筆者が後ほど質問する、デンマークのフォークソング)のアレンジをしたニルス・ヘニング・オスタード・ペデルセン。彼の曲はすごくいいです、彼はオスタード・ペデルセントリオで長い間演奏していました。彼が亡くなってからもう長い事たちますが、信じられないような名人技をもちながらとてもソウルフルでかつ叙情的にベースを演奏するプレイヤーの一人でした。彼は、たくさんのデンマークのフォークソングや童謡のアレンジを行い、それらを彼のレパートリーに加えました。それに、そのコンセプトが単純に好きですね。細かく最適に調整した曲を演奏すると、観客は身近に感じてくれると思います。みんなが知っている曲を異なる形で演奏する事が、彼は達人でした。彼は本質的にとっても素晴らしいデンマーク人ベースプレイヤーです。

さっき、ちょっと話したスヴェン・アスムッセンは現在98才で、彼は別の世代のベニー・グッドマンやデューク・エリントンと演奏しました。本当に素晴らしいスイング系ヴァイオリニストで、私が感化されたのは間違いないでしょう。

アメリカに活動拠点を移して以来、ヴァイオリンインストラクターとしての幅広い活動やたくさんのミュージシャンとの共演がありました。在米ミュージシャンとのコラボレーションはいかがでしたか?また、将来共演したい日本出身ミュージシャンはいらっしゃいますか?

はい、言うまでもなく私のバンドのみんな、マッズ・トーリングカルテットのアメリカ人ミュージシャン、ドラムのエリック・ガーランド、ギターのデイブ・マクナブ、そして、ベースのサム・ベビンとのコラボレーションは楽しんでいます。みんなモチベーションが高くてクール(カッコイイ)ですよ。

アメリカではミュージシャンとして生計をたてるには、強い願望が必要です。基金がないからです。デンマークは芸術に対する基金があり、通常、ある一定の賃金がありますが、ここには固定賃金はありません。公的な基金はないか、あっても非常に少ない。だから、私がここで出会って、コラボレーションをした人々は完全にエンゲージしていて、演奏への強い願望があります。

それから、スタンリー・クラークと彼のバンドで共演するのはプロ活動への素晴らしい入り口でした。スタンリーのライブツアーが私にとって初めてのプロのステージであったため、スタンリーがステージで私の紹介をするときには、「マッズにとっては、最初のプロのライブ」「プロになってから3番目のライブ」って毎回僕を紹介し、お客さんに冗談を言っていましたよ。

タートル・アイランド・クォーテットは言うまでもなく、音楽を学ぶだけではなく、ツアーを成功させて、プロモーションさせるのに必要な、ロジスティクスな側面を学ぶ機会でした。

日本に関してですが、上原ひろみさんとは同じ、バークリー音楽大学の卒業生です。彼女と共演するのは素晴らしいだろうね、ちょうど私がスタンリー・クラークバンドを辞めるときにバンドに参加していたから、少し自分とオーバーラップしています。私はスタンリーのアルバムである“The Toys of Men”に参加もしていました。小曽根真さんもまた、共演してみたい素晴らしいピアニストですね。バークリー音楽大学にはたくさんの日本人学生が学んでいますね。日本で人気のある音楽カリキュラムなのでしょう。

将来、たとえば東京ジャズフェスティバルに来て頂いて、共演とかあれば嬉しいですね。

そうですね、確か2006年にスタンリーのバンドで日本に行くはずでしたが、タートル・アイランド・カルテットとのスケジュールが合いませんでした。2つを掛け持ちしていたので。

そうですか、確かスタンリー・クラークバンドは何回か来日されていますね。

そう、日本に行くとブルーノートで演奏していました。ゆくゆくは、僕も日本に行きたいですね。それともう1つ、自分はヤマハアーティストでもあるから、スポンサーを得て、教育的なイベントで行く事もあり得ますね。電子ヴァイオリンが必要なときはサイレントヴァイオリンのシリーズで演奏しますから。ヤマハとの仕事は素晴らしいです。教育的なプログラムについてとても誠実です。ヴァイオリンのインストラクターとして私自身にとっても、大切な事です。

音楽を通じて何を伝えたいですか?

音楽は人間の表現です。音楽があれば、感じた事を伝える事が出来るし、どのような異なるバックグラウンドをもっていてもあなたのストーリーを伝えられる。言葉を使う代わりに、楽器が奏でる音を通じて友達である、別のミュージシャンとコミュニケーションできます。すごく、エキサイティングで楽しいですよ。
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画像:Untitled

2007年に発売された、2作目のCDである“The Playmaker”に収録されているデンマークのフォークソング:”I skovens dybe stille ro” はデンマークでよく知られていますか?この曲について教えてください。

はい、とてもよく知られています、たぶんほぼみんなが知っている曲だと思います。7才頃から小学校、中学校、高校で通常歌う曲です。フォークソングで、歌詞を書いた人はとても有名なデンマークの詩人です。(フリッツ・アンダーセン、1864)。彼の歌詞はこの作曲者不明のフォークソングにとてもよく合っています。

また、この曲は国歌ではないものの、それに近いものがあると思います。私は、この曲をジャズ風に演奏する時にもフォークソングのメロディとヴァイブ(雰囲気)を残すようにしているから、デンマーク人は皆(この曲だって)わかると思います。そうですね、すごく素敵な曲です。私のコンセプトと人々が知っている曲とが結びついているので、ヴァイオリンで違ったジャズ風アレンジメントで演奏する時は皆新鮮に感じると思います。とても美しいメロディです。

大好きな曲です。

これを日本で演奏できるといいですね。

はい、本当に。タイトルの意味は“静寂な森林”ですね。

そうです。実際、私がワシントンD.C.で演奏した時、日本人男性が近寄ってきて感極まったと話してくれました。彼もすごく好きだったみたいですね。たぶん、デンマークと日本には何らかのコネクションがあるのかもしれないね!

心洗われる“静寂な森林”I skovens dybe stille ro をMadsさんの演奏でお楽しみください。

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一番“ヒュゲリ”を感じるセッティングやアクティビティはなんですか?

ヒュゲリの場所を考えるときは、両親の家を考えます。

ご両親はデンマークにいらっしゃいますか?

そうです。リビングルームで家族が一緒にいて、暖炉のそばでただ時を過ごし、楽しむ。私にとってはそれが“ヒュゲリ”です。ホームにとても近い事。

それとここ、カリフォルニア州サンフランシスコに近いアルバニーにある自宅は、とてもデンマーク調で、デンマークの家具とデザインです。自宅を可能な限り、ヒュゲリにするように努めました。とはいえ、リラックスタイムはあまりありません。残念な事に、ここ最近はたくさんの事をこなしているので、あまりリラックスは出来ないでいます。だから、可能な限り、友達や家族と過ごすようにしています。それが私にとってのヒュッゲです。

日本のファンにメッセージをお願いします。

普段のサポート、そして “ヒュゲリニュース”で僕をチェックしてくれてありがとうと言いたいです。デンマーク文化を自国の文化に組み入れている事は素晴らしいと思います。私達はクロスカルチャーをもっと必要としていると思いますね。

それに(日本とデンマークには)コネクションがあると思います、つまり、日本とデンマークの芸術と文化に触れたとき、私達は芸術において簡素(ミニマル)なデザインを好むところが似ているし、建築なども同様に日本と接点があると思います。日本を訪問する事が出来たら、将来演奏する機会があるといいですね。一緒に日本と世界中のステージで素敵なヒュゲリな瞬間を過ごしましょう!

私もそう思います。インタビュー大変ありがとうございました。

どういたしまして。
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画像:Groove Yard オーナーのリックさんと一緒に

いかがでしたでしょうか?

デンマークでは子供の頃から、音楽や楽器に親しみ、世界で活躍するミュージシャンもいらっしゃる事がわかりました。音楽は言葉を介しない最高のコミュニケーションという言葉が胸に響きました。

機会がありましたら、ぜひマッズ・トーリングさんのライブに足を運んでみてくださいね!ヒュゲリな瞬間を過ごせる事間違いなしです。

参考:
Mads Tolling Official Website | Grammy Award-Winning Violinist | Mads Tolling Quartet | Turtle Island Quartet.
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