以前ヒュゲリニュースでもご紹介した、スウェーデンとデンマークの共同制作ドラマ『THE BRIDGE/ブリッジ』(原題BRON/BROEN)のシーズン1をようやく見終わりました。

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画像:Billeder fra sæson 1 | Broen | DR

ドラマの簡単なあらすじと見どころ

スウェーデンとデンマークを結ぶオーレスン橋。ある夜、政治家の遺体がスウェーデンとデンマークの海峡を繋ぐオーレスン橋の上で発見された。その遺体は半分に切断され、体の中央で正確に国境ラインをまたぐように置かれていたため、スウェーデンのマルメ警察とデンマークのコペンハーゲン警察が共同捜査を始める。

一風変わったスウェーデン人刑事サーガとデンマーク人ベテラン刑事マーティンの掛け合いもさることながら、この猟奇的殺人の捜査を進めていく中で見えてくる家庭内暴力、ホームレス、移民、離婚家庭など北欧が抱える社会問題を垣間見ながら、あっという間に10エピソードが終わりました。

実際に移民に対する不信感が高まるデンマーク

人とのコミュニケーションがうまく取れないサーガの成長や、スウェーデン警察内でデンマーク語がわかってもらえないマーティンなど、北欧言語がわかるからこその楽しさや、印象に残るシーンもいくつかありましたが、今回特に印象に残ったのが「移民の扱い」に関してです。

ネタバレしないように詳細は省きますが、いわゆる生粋のデンマーク人と移民してきた「新しいデンマーク人」との間にある差別。社会的な扱いが違うことへの問題提起。例を出すと、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の「これからの正義の話をしよう」にある「暴走する路面電車」のエピソードに、移民を絡めたような話が出てきます。

“暴走する電車に乗ったあなたは電車の進路を決定することが出来る。このまま電車が進んでいくと線路上にいて電車に気付いていない5人の作業員を、脇に逸れる線路に進路を変更するとそこで作業している1人の作業員をひき殺してしまう。5人か1人か、どちらかを確実にひき殺してしまう状況で、あなたは路面電車の進路をどちらに向けるだろうか?”という内容に「もしその5人が移民で、1人がデンマーク人だったら」という追加要素を入れて考えるようなイメージです。

同じ命でも、それが子どもだったら、老人だったら、妊婦だったら、移民だったら、同じ”人種”だったら、それぞれで感じ方が異なる感覚。また、ドラマ内の話ではなく現実の世界でもデンマークで移民に対して厳しい政策を取る政党(Dansk Folkeparti)支持率の伸びから見える、デンマーク国民の移民に対して募る不信感。

『THE BRIDGE/ブリッジ』を見ながら、社会の少数派として生きること、そして「命とは何か」を改めて考えさせられました。

時は金ではなく「命」そのもの

人は生まれてから死に向かって、有限の命を燃やして生きています。それぞれの命の扱われ方がその時代や国・地域、その人の立場によって異なるように、各自の持ち時間=命の長さもまた平等でありません。先進国に生まれることで平等なのは「自分の持ち時間をどのように使うか」を決められるという点だけだと思います(日本に生まれても、その点すら自由に選べないことも少なからずあります)。

仕事や家族、友人、恋人と一緒に時間を過ごすということは、そのために命を使うということ。同じように相手も自分のために命を使ってくれています。極論で言えば、何も理由がなく遅刻をしたり約束をすっぽかして相手の時間をないがしろに出来るのは、相手の命を減らしても平気ということ。というより、そうしても気にならないレベルの相手だということを「言葉ではなく行動」で示しているわけです。ただこういう「命は有限で平等ではない」といったことは、ついつい忘れてしまいがちですよね。

「時は金なり」ではなく「命そのもの」ですが、無駄づかいする人/させる人も少なくありません。

「Googleがメールでしか謝罪してこない」というのが先日ニュースになっていましたが、メールでの謝罪が可能な時代なのだから別にいいと思います。「誠意を見せる」とか、謝りにこさせることで自分達の気持ちを満たしたい人の相手をする必要はなく、同じことが起きないように何を改善するのかを考えるためにまず時間を割き、可能であればそれを発表する前に迷惑をかけた相手に共有する方がよっぽど意義も誠意もあります。「深く反省している」や「遺憾に思う」という言葉ではなく、それを示す行動がなければ何の意味もありません。何か問題があった時にとりあえず「お詫びだけ」に伺う/来させるのは、お互いから時間を奪っているだけです。

お金は兌換紙幣を止めた時から、人間が作れる「無限のもの」になってしまいました。そしてその価値も人間が管理するものです。お金は無限ですが、時間は有限です。時給という考え方も、その仕組みをわかっていないと、自分の命を1時間800円などで切り売りし続けることになります。目先のお金は手に入りますが、時給の仕事だけを漫然と繰り返しているだけでは次につながる技術や経験を習得するのは難しく、それで年を重ねてしまうとだんだん身動きがとりにくくなってしまう。制度面で見れば日本に比べてデンマークの職業訓練は手厚いですが、それでも自立出来ない人が増え続ければ社会の負担は膨れあがります。デンマークであっても国が社会的弱者を保護し続ける保障はありません。

自分の命が大切なように、他人の命も大切です。ただそれが当たり前な感覚だと思っていても、それが当たり前ではない感覚になってしまう/それが許容される場所や状況そして文化がある。だからこそ「言葉ではなく行動で人(企業)を見る」ことが大事なんだと思います。時に無駄に思えることに自分の時間を使ってしまうこともあります。自分の時間をないがしろにされたり、理不尽な社会がイヤになることもあります。それでも進み続けることが「生きる」ということなんだと『THE BRIDGE/ブリッジ』を見て感じました。

わかりやすく爽快な勧善懲悪のハリウッド映画もよいですが、なんとも言えない感情や疑問を投げかけてくれる北欧映画やドラマもオススメです。

参考:
Billeder fra sæson 1 | Broen | DR

Opbakningen til Dansk Folkeparti har aldrig været større – Politiken.dk
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