今日は『YOUは何しに北欧へ?』のVol.7をお届けします。

Vol.6のフィンランドの動物彫刻家・小山泰さんにご紹介いただいたのは、ヘルシンキのデザインギャラリーLOKALの展覧会「Hei, Nippon!」でお知り合いになった、家具デザイナーの山田吉雅さん。

山田さんは、タンペレ工科大学の建築学部に正規留学したことをきっかけに2003年8月よりフィンランドに住んでおり、現在はヘルシンキから車で1時間ほど離れたビルナスという町で木工家及び建築家として活動されています。

それでは最後までインタビューをお楽しみください!

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タンペレ工科大学の建築学部に正規留学したのがきっかけ

profile

1. フィンランドに引っ越したきっかけを教えてください。

2003年よりタンペレ工科大学の建築学部に正規留学したのがきっかけです。日本では大学で物理を専攻していましたが、在学中からアートや建築に興味が傾いていって、卒業後は建築を勉強できる大学を国内外問わず探していました。もともとフィンランドの建築やデザインは感覚が合うので興味がありましたが、当時は学費がほとんどかからず、学生は生活費が安かったので、「それじゃフィンランドにしよう」ということになりました。

最初はヘルシンキ工科大学(現アアルト大学)で入学試験を受けて落ちましたが、そのとき隣の女の子のスケッチがものすごく上手いのにショックを受けて、次からは倍率の少し低いタンペレ工科大学に受験して計3年かけてやっと入学できました。タンペレはよりアットホームでいい友達ができたので、今では試験に落ちたことに満足しています。

その後、デンマークデザインスクールへの留学や木工所、建築事務所の研修が間にあり、学士と修士のコースを卒業するのに延べ8年かかりました。卒業後は、フィンランドで木工と建築の仕事をしています。

2. 今はどのような活動をされていますか?

タンペレの建築学部ではコンピュータを使った設計が主流で、実際にものをつくることに飢えていたので、在学時よりフィスカルス村のニカリという家具工房で家具職人として研修をしていました。

2012年より独立し、フィスカルス村で個人の会社ウープ(UUP)をたちあげました。フィンランド語で木という意味のPUU(プー)をひっくり返し、会社の名前にしました。2013年10月よりそれぞれ自分の会社を持っている2人の家具職人と共同で、ビルナス村の古いレンガの馬小屋を修復して、工房として使っています。工房の名前はMokko Talli。Mokkoは日本語の木工から、Talliはフィンランド語で馬小屋という意味です。

工房で作っているものは基本的には木組みの家具ですが、その他にも表面を焦がしたコースターのような小物から節穴を窓として使った木組みの厠(かわや)のような小さな建築物までいろいろなものがあります。

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職人の仕事はなかなか儲からないが、それでもやっているのは、作るのが好きだから

3. フィンランドに来て仕事上で一番の苦労話(あるいはカルチャーギャップを感じたこと)を教えてください!

どこの国でも同じだと思いますが、普通とは違った経歴を経て個人で小さな会社を持っている変な外国人、ということでなかなか滞在許可が下りないです。私の滞在許可の問題を新聞の記事として載せてもらったこともありました。

普段の仕事で難しいと感じるのは、木工を含めた職人の仕事はなかなか儲からないということです。それでもやっているのは、作るのが好きだからでしょう。陶芸家の河井寛次郎やデザイナーの柳宗理がとても好きで、自分も同じように作ることをやりたいと思ってやってきたので、できるところまで続けていきたいです。将来は建築と木工を組み合わせてやっていく計画です。

たまに木工を始めたい人から相談を受けることがありますが、あまりお勧めしていません。それでもやりたいという変な人なら、やっていけるかもしれませんね。

4. フィンランドに来て仕事上で一番嬉しかった話を教えてください!

フィンランド最大のデザインフェアである、ハビターレデザインフェアのコンペで賞をもらったとき、賞をもらったことよりも、そのおかげで滞在許可がもらえたことが嬉しかったです。

それ以外では、実際にものをつくってそれが完成したとき、作ったものを通じて人間関係が広がっていくときが嬉しいです。Lokal Helsinkiというギャラリー兼ショップとは仕事を通じて親しくしてもらい、行くたびに新しい知り合いに会います。このインタビューシリーズの紹介元の小山さんもそちらで知り合いましたし、Lokal Helsinkiの展覧会への出品を頼まれたことで曲がったテーブルの足のアイディアができたということもありました。

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5. 山田さんがフィンランドで学んだ仕事術あるいはライフスタイルで、日本でも取り入れられそうな(あるいは日本人が見習うべき)ことはありますか?

木工の仕事に関してフィンランドが日本と違うところは、たとえば一日8時間としたら、8時間できっちり終わるように仕事をし、残業がほとんどないことです。そういう潔さがフィンランド人にはあります。ただ日本に比べたら仕上がりや精度に劣る部分があるので、一概にどちらがいいという話でもないかもしれません。バランスが大事でしょう。

時間がきっちりしているということは従業員に当てはまる話で、私のような個人の会社を持っている木工職人達はこちらでも長い時間働いていることが多いです。

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6. 今後の目標をぜひ教えてください。

なるようになるという感じでやってきているので、今のところ目標はないです。

直近の活動としては6月9日から一週間半期間限定ショップをヘルシンキのラシ・パラツシ(Lasipalatsi)というところでグループで開いたので、外のテラスに出す骨組みの構造物を作りました。6月12日からは前述のLokal Helsinkiで木の展覧会があり、そちらには小物を出品しました。

今は、曲がって育つことが多いトネリコという木の性質を生かした家具シリーズを試作しているところで、7月10日から約1ヶ月間ヘルシンキのアルテック本店での展覧会で見ることができます。

氷の張った湖に開けた穴から泳ぐアヴァント(Avanto)が好き

7. 山田さんにとって、もっともヒュゲリ(デンマーク語で「心地良い」)な瞬間はなんですか?

サウナの間に湖で泳ぐ時です。冬、氷の張った湖に開けた穴から泳ぐアヴァントが好きだとフィンランド人に言うと、君はフィンランド人よりもフィンランド人だと言われます。アヴァントは50回ぐらい経験があると思います。

学生時代に週3日くらいサウナに入っていましたが、いまはまわりにサウナが少ないので頻度はそれほどでもなく、1〜2週間に1回くらいです。建築学部での修士論文のテーマが、公共のログサウナの設計で、その頃は各地の公共サウナに行っていました。

Sauna

8. この企画は、リレー形式で続けようと思っております!他に北欧で活躍している日本人の方をぜひご紹介ください。

ヘルシンキ在住アーティスト川地琢世(かわちたくよ)さんをご紹介します。会社を始めた頃フィスカルスで日本人の知り合いからインタビューを受けたときに、川地さんもスタッフとして一緒についてきました。それが出会いのきっかけです。そのあと、ヘルシンキのカイサギャラリーでグループ展を開いたときに誘ってもらったりして、ちょくちょく会うようになりました。

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いかがでしたか?

異国の地で個人の会社を立ち上げ、滞在許可を得るのに一苦労をしたりと、紆余曲折のあった山田さん。そんな辛い日々がありながらも、10年以上の月日をフィンランドで過ごし続けることができたのは、山田さんがとにかく「作るのが好きだから」なんでしょうね。軸をぶらすことなく、まっすぐ突き進んでいくその姿勢には、とても尊敬します!

そして、サウナの間に氷の張った湖で泳ぐアヴァントが好きだとのこと…。一風変わったフィンランドの文化に、自然に溶け込めてしまうところも、山田さんがフィンランドで上手くやっていけているひとつの秘訣なのかもしれませんね。

機会があったら、山田さんの修士論文のテーマである、公共のログサウナの設計について詳しくお話を伺ってみたいところです!

次回はヘルシンキ在住のアーティスト、川地さんをご紹介します。

引き続きお楽しみに!