さて、今回はとある機会があり、フィンランドと日本の「ハーフ」の方にお話をうかがうことになりました!
お話ししていただいたのは、加藤ロウヒルオト礼絵奈(れえな)さん。フィンランド人の父、日本人の母を持ち、日本で生まれ育った、現在大学生の方です。
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父親がフィンランド人とはいうものの、フィンランド語が全く話せず、それが悔しくて大学ではフィンランド語を勉強しているのだとか。じゃあ、フィンランドに行ったときはどうしていたのか?「ハーフ」として日本で暮らすって、どういう感じなのか?興味深いお話をたくさん聞けたので、ぜひお楽しみください!

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「プッラ」と「パッロ」

 

どのぐらいの頻度でフィンランドには行きますか?

小学生になるまではけっこうよく行っていたんですが、それからしばらくは全然行きませんでした。小学5年生のときに初めてひとりでフィンランドに行って、それからは姉と一年交代ぐらいです。大体2、3週間、長くて1ヶ月半ぐらい滞在します。父がチケットを送ってくれることもありますし、自分でお金を貯めて渡航したりもします。

 

フィンランドの親戚の方たちとは、どうやってコミュニケーションをとるのですか?また、フィンランド語での失敗談や、日本とフィンランドの親戚関係の違いなども感じることがあれば教えてください。

フィンランド人はみんな英語が上手なので、英語を使います。ただ、今はもう亡くなってしまった祖父母は英語ができなかったので大変でした。コミュニケーションはジェスチャーか、カタコトのフィンランド語。小学生ではじめてひとりで祖父母を訪ねたときは、「はい」「いいえ」「おいしい」「おはよう」ぐらいしか覚えてなかったんです。それで当時、少し物忘れが多くなっていた祖母が、育ち盛りの私におなか空かせちゃいけないと思って、何度も「おなか空いた?」って聞くんです。私はそのとき、もちろん祖母が何言ってるのかわからなくて、でも「いいえ」よりは「はい」のほうがいいだろうと(笑)答えていたら何度もごはんが出てきて、おかしいなとは思いながらも食べていたら、太っちゃったりとか(笑)%e9%a3%9f%e5%8d%93
<摘んできたベリーと共に食事>

最近も、ちょっと勇気を出してひとりでカフェに行ってシナモンロール(フィンランド語で”プッラ=pulla”)を頼もうとしたんです。でも単語を間違えて覚えてしまっていて「パッロ(=pallo)ください」って言っちゃってたんです。パッロって、”ボール(球)”って意味で(笑)店員さんは「何言ってるのこの子は?」みたいな顔してるし・・・。「カフェでボールって?」ってことですよね(笑)それで結局は、ケースの中のプッラを指差して注文することになりました(笑)

親戚関係の違いで言えば、これは私のところだけかもしれないんですけど、日本では親戚が集まるときは、みんなが同じ空間で同じことをすることが求められるんです。でもフィンランドでは、ごはんをみんなで食べたりはするんですけど、そのあとはけっこう自由というか。みんなで集まって話をしていても、必ずひとりかふたりは外でボーっとしたりラジオ聞いたりしてるんです。それで私が「こんなに楽しく話をしてるのに、あの人たちも呼ばなくていいの?」って聞くと、「あの人たちはあの人たちなりに楽しんでるから。彼らなりのスタイルがあるから放っといていいのよ」って言われて。こっちが楽しいからって呼びよせたりするのは、ある意味ではこちら側の事情なんだなっていうのを感じました。

 

「あー、ミックスなんだ」と思った瞬間

 

フィンランドにいる間はどのように過ごしますか?

ヘルシンキの観光や、旅行もします。船に乗ってエストニア行ったりもできます。今いちばんのお気に入りは、ヘルシンキの西隣の町エスポー(Espoo)にある「ヌークシオ国立公園」です。ここは、ざっくり言えば森(笑)大人から子どもまで楽しめるいろんなハイキングコースがあって、そこでベリーやキノコ摘みができます。所々にはグリルと薪があって、ソーセージと着火剤をもっていけば簡単なBBQもできるんです。いいですよね!
あとは、車で1、2時間のところに親戚のコテージがあって、そこで釣りをしたりのんびり過ごしたりするのも好きです。コテージは、私の親戚に関して言えば親から受け継いで持っていたりもするみたいです。
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<ヌークシオ国立公園内の様子>

 

「ハーフ」としてのアイデンティティーを意識するようになったきっかけなどはありますか?

はじめてひとりでフィンランドに行ったときじゃないかと思います。私は小学生のとき、今よりも外国人顔だったので、ぼんやりと「自分は周りと違うのかな」という感覚はありました。それでフィンランドに行ってみると、周りの人はブロンドの髪で目が青くて鼻が高くて・・・。でも、その人たちと一緒にサウナに入ったり、ベリー摘みをしたり、日本人が苦手な味って言われるサルミアッキを食べたりしていると(私はサルミアッキが好きなんですけど)、自分がフィンランド人のような感覚もしてくるんです。でもやっぱり、ふと見ると顔立ちや肌の色なんかは違っている。そう考えると、私は日本では完全な日本人じゃないし、フィンランドでは完全なフィンランド人ではない。あー、ミックスなんだ!って思いました。
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<小学5年生ごろの礼絵奈さん>

「ハーフ」であるために嫌な思い、恥ずかしい思いをした経験はありますか?

小学生のときは、名前が特殊で、それに外国人顔で背も高かったので、周りから「外国人だ!」みたいに言われたりしたのは嫌でしたね。少し大げさに言うと、動物園の動物みたいな、見世物みたいな感じでした。
あと、月に一度ぐらいネイティブの先生が英語の授業をする機会があったんですけど、そのときに私の顔立ちと、あと実際に私が少し英語ができるっていうのもあって、周りから「おまえがしゃべれよ」みたいな感じになるのも少し嫌でした。

逆に、得をしたと感じた経験などはありますか?

名前を覚えてもらいやすいですね。あと、さっきも言ったような授業のときに、はじめは発言するのとか嫌だったんですけど、ある時ふと、「周りよりも早く先生と仲良くなれるな」って気付いたんです。先生も、そうやって私が話すことを喜んでくれていました。
あとは、私は自己紹介のときに名前とか家族構成とか、基本情報を言うだけでも3、4分はかかるんです(笑)だから印象は強いみたいで、仲良くなる第1ステップが早くできたりします。

 

ありのままの個人として独立していること

 

フィンランド人の「人との付き合い方」が北欧独自の価値観なのでは、と考えてらっしゃいますが、具体的にはどういうことですか?

フィンランドでは、自分以外は他人で、それぞれにプライベートがあるという考え方をします。家族間であっても、そういう距離感は大事にしています。そもそも人として独立していることが求められていますね。だから、自分以外のことも尊重して、対等に接するということになります。
「自分以外は他人」って、ドライに聞こえるかもしれないですけど、お互いの年齢や性別や、そういったものに関係なくそれぞれの個を認めるということです。自分の価値観を持つことは大事だけど、それを他の人に押し付けることはしない。「自分ならしないな」という選択を他の人がしたとしても、その人の選んだ道なんだからそれには口出しせず、遠くから見守って応援する、という姿勢です。

日本では「ハーフ」や「オネエ」といった、いわゆるマイノリティーの人たちが、メディアの中でひとつのキャラとして独特な立ち位置を持っているように思います。その点についてはどう見ていますか?

まさに「キャラ」という表現がピッタリで、私は彼らが、メディアが作ったキャラを演じていることが仕事なんだなと考えています。「オネエ」キャラの人は女性的な話し方をしたり、「ハーフ」の人はカタコトでしゃべったり。フィンランドでは「ありのまま」が求められるので、キャラ設定とかはありえないと思います。

日本は「ハーフ」(あるいはマイノリティー)の人たちに住みよい国だと思いますか?

住みやすいとは言い切れませんが、徐々に住みやすくはなってきていると思います。私が小学生ぐらいのころは、それこそ他クラスの子から指差されるぐらいハーフが珍しかったと思うんですけど、それが変わってきているように感じます。帰国子女の人とかも増えてきて、みんなも慣れてきたというか。以前は「純日本人じゃない=変わってる、異端児」みたいな扱いだったのが、今は「この人が変わってる」という感覚になってきている気がします。そういう感覚が広がっていって、徐々にハーフの人たちには暮らしやすくはなってきているんじゃないかと思います。

それでは最後に。北欧ファンの方々に、フィンランドのオススメスポットなど教えてください。

先ほどお伝えした「ヌークシオ国立公園」はもちろん、あとは「スオメンリンナ」もおすすめです。ヘルシンキの港から30分ぐらいで行けるんですけど、コテージを持っていない人なんかは、よくここに来て野原でゆったり過ごしたり、海で泳いだりもしています。カフェが何軒かあって、ちょこっとスーパーがあって、っていうシンプルな場所なんですけど、そこでゆっくり歩いたりのんびり過ごしていると、フィンランド人になったような感覚にもなれるんじゃないでしょうか。
マリメッコに行ってお買い物とかも楽しいですけど、荷物とかあまり持たずに、ふらっと公園に行って写真撮ったりぼんやり過ごしたりするのもいいと思いますよ。
あとは、ハメーンリンナという町にある記念公園でのハイキングもいいですよ。フィンランドの魅力が詰まっていると思います。
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<スオメンリンナにあるカフェの外観>

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いかがでしたか?
フィンランドでの豊かで贅沢な時間の使い方には憧れちゃいますね。でも、おばあちゃんの出してくれるごはんを何度も食べることになってしまったり(笑)、「自分は他の子たちとは違うのかも」という感覚を早い時期から持っていたという、人知れぬ苦労もうかがえました。
また、フィンランドでは、年齢や性や、ましてや「キャラ」に関係なく個が尊重されるという考え方が徹底されていますね。
もちろん、フィンランドでも日本でも各家庭、あるいは個人個人で考え方は違うので、今回のインタビューが絶対、ということにはなりませんが、普段なかなか聞くことのない貴重なお話を聞けたのではないかと思います。

 

参考:ヌークシオ国立公園(英語)

アウランコ自然公園(ハメーンリンナ) (英語)

スオメンリンナ(日本語)

写真提供:加藤ロウヒルオト礼絵奈さん