今回、北欧発の青春映画「ハートストーン」を鑑賞する機会を頂いたので、ご紹介します。 舞台はアイスランドの小さな漁村。広大な自然と閉塞的な人間関係の中で、思春期を迎えた少年たちが傷つきもがきながら、少しずつ大人になっていく様子が丁寧に描かれています。 ハートストーン_サブ㈪
<(C)SF Studios Production & Join Motion Pictures Photo Roxana Reiss>

本作の見どころ

本作はLGBTや家庭内暴力などシリアスなテーマも盛り込まれ、いろいろな見方のできる作品ですが、個人的には主人公である少年ソールが、彼を取り巻く人々との出来事を通して成長していく様子が魅力の一つだと感じました。ここでは特に三つをピックアップしています。

男友達との絆

思春期を迎えた少年にとって大きな存在となってくるのが、同性の友人。本作でも幼なじみのクリスティアンとの友情がメインとなっています。遊びも悪いことも共に経験し、時に罵り合ったりすることもあるけれど、互いに深く信頼し合っている。純粋な二人の強く美しい絆とそれぞれの葛藤には胸を打たれます。また、クリスティアンの中で友情以外の特別な感情が育っていくにつれ、少しずつ二人の関係が変容していく様も見ごたえがあります。

憧れの少女と淡い恋

ソールは大人びた少女ベータのことが気になっており、次第に二人の距離は縮まっていきます。彼女の言動に一喜一憂したり、彼女の前で大失敗して落ちこんだりするソールの姿には、誰しも重なる部分があるのではないでしょうか。この年代特有の身体へのコンプレックス、そして芽生え始めた性への興味と憧れも、グズムンドソン監督は見事に描き出しています。

少年を見守る家族

女でありつづけたいと願う奔放な母と、我の強い二人の姉たち。ソールは振り回されてばかりでうんざりしていますが、彼が知らないところで優しく見守っているのもまた彼女たちなのです。普段はうざったくてイヤなところばかり目についてしまうけれど、それでも自分にとって大切なもの。そんな家族に対する複雑な心境に共感する人も少なくないと思います。

ハートストーン_サブ㈯
<(C)SF Studios Production & Join Motion Pictures Photo Roxana Reiss>

そして本作のもう一つの魅力は、なんといってもアイスランドの風景と言えるでしょう。北欧ならではの雄大で美しい風景が、画面いっぱいに広がる様子は圧巻の一言です。 映画のタイトルである「ハートストーン」は、“暖かい感情”と“厳しい環境”を意味する「Heart(ハート)」と「Stone(ストーン)」という2つの単語を合わせた造語だそうですが、残酷なまでの荒々しさを見せる一方で、少年たちの行き場のない苛立ちや衝動を受け止める懐の深い自然の姿も、タイトルには込められているのかもしれません。

今を生きる少年少女へ、そして思春期を経験した大人たちへ。

等身大の青春は、かっこ悪くて恥ずかしくて、ひりつくように痛くて、そして切ないほど愛おしい。思春期真っただ中の少年少女も、かつて経験してきた大人たちも、それぞれに感じるものがきっとあります。この冬は劇場で、美しい自然と少年たちの姿に心揺さぶられてはいかがですか?

[information]
現在、神戸・元町商店街のミニシアター、元町映画館にて公開中。
元町映画館外観 元町映画館内観

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参考:映画「ハートストーン」公式サイト