洗練されたデザインで知られる北欧ですが、北欧の一国スウェーデンで「日本人気質」を武器に認められた女性をご存知ですか?
彼女の名前は美知子・エングルンド。今年、スウェーデンではマデレーン王女の結婚式が控えていますが、彼女の元にはすでに王女夫妻へ贈る品物の依頼があったそうです。
現在、美知子さんはストックホルムで金属彫刻の専門家として働いています。
写真:美知子・エングルンドさんのアトリエにて
金属彫刻って、ちょっとピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。一番分かりやすい例ですと、よく指輪の裏にイニシャルや日付が彫ってありますよね?機械で彫るのが最近では一般的ですが、お店によっては職人による手彫りをオーダーすることも出来ます。
スウェーデンでは、人生の節目節目にする贈り物に彫刻をする文化が残っています。誕生日を迎える妻に、無事に大学院を卒業する甥に、そして結婚40周年を迎える両親に。
北欧には世界に誇るシルバーブランド、ジョージ・ジェンセンがありますが、そのような銀製品に紋章やメッセージを刻印してプレゼントするのも人気のようです。お客さんはジョージ・ジェンセンの商品を買った後、それを美知子さんのアトリエに持ち込んでメッセージのオーダーをするという流れ。上流階級の人は銀のナプキンリングや指輪に紋章を刻印してもらったりするのだとか。日本の家紋みたいだと思いませんか?
写真:新しいものにチャレンジしたくてナイフに彫ってみたそう。手前は仕事につかう彫刻刀。
彼女が仕事を始めたのはおよそ40年前。今ではスウェーデン国王、王妃、それからヴィクトリア王女&ダニエル王子の依頼も受けるほどの職人として成功しています。
写真:スウェーデン王妃、シルヴィア様の名前を意匠化したデザインが彫られたカフスです
現在はスウェーデンの有名ホームファッションブランド:スヴェンスク・テンの依頼でヨセフ・フランクのデザインをテーブルに彫っているそうです。10枚限定のこのテーブル、なんと一枚にかかる製作時間は60時間なのだとか!まさに選ばれた人のためのテーブルですね。
写真:スヴェンスク・テンに作品を置いてもらうのは一流の証。そのテーブルの一部です。
こちらで作業風景を見ることが出来ます。
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そんな彼女も、最初から成功していたわけではありませんでした。
彼女がスウェーデンに移住し、金属彫刻師見習いとして仕事を得たのが40年前。そのころは、まだスウェーデンが今のように外国人で溢れていたわけではありません。そして、職人の世界だけあって同期も先輩も男性ばかり。女性で、しかもアジア人の美知子さんが受け入れられるのには大変な努力が必要でした。
写真:エステルマルムのアトリエにて作業中の美知子さん
それでもこれほど成功できたのは、彼女の腕の確かさと日本人ならではの丁寧さ、根気強さがあったからに違いありません。今年のマデレーン王女夫妻へ贈るプレゼントにはどんなメッセージが彫られるのでしょう?さすがに詳しくは教えてもらえませんでしたが、ロイヤルウェディングの贈り物に、日本人によってメッセージが彫られるなんてワクワクしますね!
参考: 美知子・エングルンド公式HP