今年5月に大々的に報じられたHusby(ヒュスビィ)に続き、12月15日にスウェーデンはストックホルムのKärrtorp(シャルトルプ)という地域で、移民問題をめぐる暴動が起こりました。
写真:DN
以前から移民排斥の落書きやビラが横行する当該地域で、当日約200人の人種差別に反対するデモ隊が「人種差別主義者は存在しない!私たちの通りに!(Inga rasister på våra gator!)」と叫び、従来からスウェーデンに根付いてきた「多文化共生」および「世界市民」の概念を呼び起こすため、デモを行いました。
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そのデモ隊に対して、約50人の好戦的なナチグループであるスウェーデンレジスタンス運動(Svenska Motståndrörelse)の組員が黒の服装に覆面という姿で襲いかかり、少なくとも2人の警察官を含む4人の者が負傷し病院に運ばれ、関係者28人が逮捕される騒ぎとなったのです。
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もくじ
目撃者の証言(現地メディアより)
「人種差別主義者が現れて、ビンや爆竹を子どものいる家族に対して投げつけ始めた時には、言葉を失いました。デモ隊の多くは出血していて、中には顔半分が血で染まっている方もいたんです。」(引用:DN)
「画びょうでいっぱいになったビンをデモ隊に向かって投げている人もいて、周りの人はみんな本当に怖がっていたよ。」(引用:SvD)
「暴力的行動を喜んでしていることや、平和的なデモ活動ができないという状況に憤りを感じずにはいられません。彼らがどうしてこのようになってしまったのか、わたしはショックでなりません。」(引用:SvD)
移民排斥を掲げるスウェーデン民主党
スウェーデン全体としては、まだまだ人道主義の観点から多文化共生、世界市民の概念が根付いています。しかし、スウェーデン民主党(2010年の国政選挙で議席を獲得し、2014年の選挙でも議席数を伸ばすと予想されている)の勢いが増すにつれて、社会保障負担の重責や就職が困難である原因を移民に求め、亡命希望者およびその家族の居住許可数を90%減少させようとするスウェーデン民主党の方針が、市民の考えに影響を与えているのは事実です。今回の暴動も、スウェーデン民主党を支持する団体の犯行とみられるでしょう。
そんな中、スウェーデン民主党支持者の中に外国に出自を持つ者も多くいるという調査がスウェーデン統計局(Statistiska Centralbyrån)により発表されました。これは、“スウェーデンの社会制度・文化・言語を理解または十分に運用する能力を持ち、かつ就労・就学等の社会とのかかわりを通し、スウェーデン社会に市民としての義務を果たしている者”、つまり既に統合された移民や難民の人々が、そうでない移民・難民の人々に対して不満を抱えていると考えられるでしょう。
しかし、一旦移民排斥の感情が大きくなってしまえば、スウェーデン人にとって、ある移民の人が統合されているのかいないのかということが問題にならなくなる恐怖も生じると思います。統合されている移民によって、スウェーデン社会は恩恵を受けているのにもかかわらずです。
―はたして、自分のとっている行動が本当に正しいのかスウェーデン国民にはもう一度考えてもらいたいと願うばかりです。今まで築き上げてきた人道国家としての名声が曇りだし、失ってしまう過渡期にいるのではないかという不安を覚える今日この頃です。
参考:DN, SvD, NORDFRONT, Sverige Radio