ヒュゲリなコラム

おしゃぶりの木ってなあに?デンマーク流おしゃぶりとの付き合い方

もくじ

3年の苦労より、寝れない3日を選ぶ親たち

娘が産まれたての頃、寝かすのに苦労していた私たち。訪問幼児看護師のラエケは、おしゃぶりを使うことを勧めました。

「おしゃぶりを辞めるときには3日ほど寝れない日が続いて大変だけれど、使うと子供も大人も毎日が楽になる」と、3日と3年を比較し、3歳になってきっぱり辞めれば歯並びに影響もないと言います。

私は、何となくおしゃぶりに抵抗があったので気が進みませんでしたが、ものは試しだとおしゃぶりを買ってきました。

ところが、娘は口に入れたおしゃぶりをペッと出します。

色んな形や大きさのおしゃぶりを試しましたが、やっぱりペッ。

ああよかった、使わないで済むと内心ほっとして、おしゃぶりを使わないまま1年が過ぎました。

ところが、1歳を過ぎて保育園に通い始め、数ヶ月たった頃に変化が。

デンマークの保育士が勧めるおしゃぶりの使い方?

娘が当時いた0歳から2歳の組は、おしゃぶりを使う子が大半。

最初は見ていただけの娘も、他の子のおしゃぶりを興味から口に入れたのをきっかけに、おしゃぶりに目覚めてしまったのです。

保育士のカリーナに相談すると、

「興味本意で試しているだけかもしれないから様子を見たらどうか」

「本人が欲しがったら、他の子たちが使っているのにあなただけダメと言うわけにはいかない」

「保育園に1日中いるのは、子どもにとっても、とても大変でエネルギーが必要なことだから、おしゃぶりがあると子どもも安心する」と言います。

泣き出した子への対応は「抱きしめる」「ねんねん毛布やぬいぐるみ」「おしゃぶり」の3点セット。

子どもの歯並びや我慢より、感情を落ち着かせることを優先する考え方です。

気乗りはしませんでしたが、保育園だけで使うという決まりで、おしゃぶりをあげることにしました。

理解しやすい理由なしで「あなただけダメよ」というのは良くない影響を与えると判断したからです。

そして、どうせ使うならと、保育園にあるスペアではなく歯並びに影響しにくいものを買い、決まりごとのもとに使い始めました。

おしゃぶりの効果に助けられた私たち

初めのころはルールもはっきりしていましたが、ある旅行をきっかけにあやふやになり、おしゃぶりを使う時間が増えてしまいました。

デンマークから海外旅行に行ったときです。

長時間のフライトと時差ボケに役立つだろうと「念のため」に持って行ったおしゃぶりが大活躍。

飛行機でも泣かないし、時差ボケの寝付きにも役立ち、私たち親も正気を保ったまま、旅行を楽しむことができました。

それをきっかけに、子どもへの利点だけではなく、親への利点もみえ、デンマークに帰ってからも、保育園以外でもおしゃぶりをあげるようになり(なってしまい)ました。

やめるのに適した年齢はいつだろう?

それから1年ほど経ち、娘も2歳半。言語の発達のことも考えて、私たちは娘のおしゃぶり卒業のタイミングを考えるようになりました。

保育士のカリーナから、「おしゃぶりをしているときは遊ぶ気が萎えてしまい、他の子たちが元気に遊んでいるときも、大人の膝に座ったまま動こうとしない」と聞いたことも気がかりです。

彼女のアドバイスを元に、遊ぶときとしゃべるときはおしゃぶりをしないように促しながら、数ヶ月が過ぎました。

そして、3歳を目前にした娘をみていて、おしゃぶりが必需品ではなく、ただの習慣になりつつあるなと感じるようになり、いよいよ私は卒業の準備を始めます。

赤ちゃんから子どもへの階段をのぼるために

七五三の3歳は、赤ちゃんから子どものステージへ進む成長を節目にお祝いをしますが、デンマークでは「おしゃぶり卒業」が同じような意味合いを持っています。

4〜5歳まで続ける子もいますが、多くの子どもたちは3歳でおしゃぶりを卒業します。

まだ赤ちゃんでいたい気持ちと、自分は大きいから何でもできるんだという気持ちの狭間で揺れる子供たち。

娘も、自分で色々やりたいし、できるようになった反面、寝るときも泣いたときも疲れたときも、例外なくおしゃぶりを欲しがるようになっていたので、夫も私も、これは辞めるのは大変だなと覚悟を決めていました。

以前、訪問看護士のラエケからは、「辞めるときはきっぱり辞めること。もしもの時のための『非常おしゃぶり』はナシ。家中にあるおしゃぶりを全部処分しないと上手くいかない」と聞いていたので、プランを練りました。

保育士のブリットとも相談し、予告なしで急に辞めると精神上良くないので、移行期間をもうけることに。

準備期間として、ワニがおしゃぶりに別れを告げる絵本など、おしゃぶり卒業に特化した絵本を何冊か図書館から借りてきて読みました。

そして「3歳になったら、おしゃぶりの木に行っておしゃぶりとバイバイしようね」と予告しながら、心の準備をしてもらいます。

卒業当日の娘の様子は……

デンマークには、赤ちゃんがおしゃぶりから卒業する際、木におしゃぶりをくくり付ける習慣があります。

記事冒頭の写真、実はその「おしゃぶりの木」なんです。

フレデリクスベア公園にあるおしゃぶりの木は人気があり、1,000個は下らないおしゃぶりが、カラフルな花のようにぶら下がっています。

他にも、サンタクロースや歯医者、おもちゃ屋でおしゃぶりとお別れする子もいるようですが、我が家では木を選びました。

当日の金曜日は夫も有給を取り、週末3日を使ってサポートしあいながら移行できるようにプランを立てたので、準備は万全。

朝からおしゃぶりの木に向かいました。

家をでる前に、木の枝にかけられるよう全てのおしゃぶりを紐に通し、ネックレスのようにして準備しましたが、一つだけは「しゃぶり納め」として、道中に名残を惜しんでもらうことに。

娘は、今までは話すだけだった予定が現実になることを理解した様子で、おしゃぶりの木を見ると「イヤだ」と抵抗します。

でも、大事なのは本人が自分でおしゃぶりを手放し、自ら木に下げること。

渋っていた娘も、最終的には夫の助けを借りて自分の手でおしゃぶりを下げることに成功。

しかし、とたんに世界の終わりのように泣き出し、激しい抵抗を開始。

抱きしめて慰めるとともに、残りの一日をポジティブで楽しいものにするように、本人が選んだレストランで外食したり、好きなおもちゃを買ってあげたりして過ごしました。

デンマーク流おしゃぶりのススメ

覚悟していたほどの大騒ぎもなく、娘を無事におしゃぶりから卒業させることができました。

皆の言う通り、卒業後3日ほどの間は日に何回か(特に寝る前に)おしゃぶりを欲しがり、1ヶ月たった今でも、ごくたまに「おしゃぶり」と言う時があります。

そんなときは、夫も私もこう答えます。

「おしゃぶりは、おしゃぶりの木に他のお友だちとみんな一緒にいるよ。元気にしてるかなあ」

赤ちゃんから子どもへの階段をのぼり、おしゃぶりなしで気分を落ち着かせることを覚えていく娘。

こうして、私たち家族の日常生活からおしゃぶりはいなくなりました。

当初は何となく反対でしたが、デンマーク流でおしゃぶりを取り入れてよかったと思っています。