もくじ
迷うデジタルとの付き合い方
2007年に初代iPhoneが発売されてから、早13年。
「あると便利」を通り越し、今や、スマホやタブレットは生活の必需品となりました。
2007年に産まれた人は、現在13歳。
パソコンやガラケーと育った世代もいるものの、現時点ではまだ、スマホに子守をされて育った親は存在していないわけです。
加えて、今、乳幼児を育てている親たちは、多くが「デジタルイミグラント」(IT普及以前に産まれ、だんだんと馴染んできた世代)。
デジタルが及ぼす乳幼児とその家族への影響に関して、まだまだ前例やリサーチが少ない分野のため、多くの親が試行錯誤を続けています。
コペンハーゲン市も、これを認識し、「5つのアドバイス」と称したパンフレットを配りました。
私が偶然これを手にしたのは、市内の図書館です。
パンフレットの目的は、家庭内で親子共に正しい習慣を身につけ、冒頭のイラストのようなシチュエーションを避けること。
専用のサイトも設けています。
以下、5つのアドバイスを紹介します。
1.範囲/限度と内容
「どれくらいの時間、子どもが『デジタル画面』に触れるかは、親であるあなたが決めること」としながらも、年齢にあわせて、子どもが目にするコンテンツを、注意深く選ぶことを推奨しています。
・0~1才は、ゼロ時間の「スマホ(タブレット)タイム」
運動・身体能力、クリエイティビティや言語の発達には、乳幼児がデジタルから得られることは、ほぼないに等しい。
むしろ、身体を動かし、おもちゃで遊ぶ方ことを奨める。
・2~4才は、制限付きの「スマホ(タブレット)タイム」
じっとして、集中して画面を眺めることは、最大1時間/日を奨める。
(WHOの推奨に基づく)
2.共有できる体験にする
子どもに一人でデバイスをコントロールさせるのではなく、親も隣で画面を一緒にのぞき、目に入ってくるものについて話し合うことを推奨しています。
他にできる「共有」として、一緒に写真やビデオを撮ったり、音楽を聴いたり、ゲームをすることを提案。
小さい子には理解できないことを、積極的に会話することで、デジタル体験を「共有」のものにすることの重要性を説いています。
3.「家族全員がデジタルフリー」の時間を作る
大人も子どもも含め、家族のメンバー全員がデジタルフリーになる時間を決めることを推奨しています。
例えば、食事中、寝る前は画面を見ない、と決めることで、親子のふれ合いの時間をデジタルに邪魔をされないリズムを作ります。
・親は子どものロールモデル
親であるあなたのデジタルとの接しかたが、こどもの習慣に直接の影響を与える。
4.身体を動かして遊ぶ
スマホやタブレットに時間を取られ、身体を使った遊びや運動が制限されないようにすることを推奨しています。
・デンマーク保険委員会の推奨
可能な限り「デジタルタイム」は無くし、十分に身体を動かすこと
身体を動かすことは、子どもの運動能力発達に役立つだけではなく、子どもは、身体を使って周りの状況判断をしたり、他人とコンタクトをとったりする。
・スマホ・タブレットと睡眠
子どもがよく眠れないのであれば、布団に入る1時間前には電源を切ること。
ブルーライトには覚醒作用があり、眠りにつくのも、眠りの質にも悪影響がある。
5.外に出る
自然とふれ合い、外で遊ぶ子どもたちは病気にかかりにくく、インドアで過ごす子どもより運動能力に優れている。
親の重要な役割は、子どもがデジタルにかける時間をコントロールし、成長に大事な運動や遊びの時間を妨げないように働きかけること。
外で遊ぶことを優先し、積極的に公園、遊び場や郊外の自然の中で遊ぶこと。
実際は?
では、実際はどうでしょう?
実際に周りの子どもたちを見ていると、「家庭の決まり」には、ばらつきがあります。
0歳から小学校低学年の子どもがいる周りの親とも、デジタルについて話す機会が多くありますが、決まりごとも家庭それぞれ。
長時間の電車の移動時にスマホを見ている子ども、見せている親。
髪を切るときだけ、DR(日本の教育テレビ)の短い子ども向け番組をアイパッドで見せる家庭。
カメラとして、写真を見せる目的だけに使っている家庭。
オーディオブックを主に聞かせ、テレビやスマホは見せない家庭。
子どもと一緒に遊んでいるときは、親もスマホを見ない決まりごとの家庭。
デジタルとの関わり方の程度は違うとはいえ、多くの家庭は上記5番のポイントを大切にし、公園や外で積極的に遊ぶ子が多いように思います。
2年ほど前、娘と夫と公園で遊んでいると、韓国のリサーチ機関から来たグループにインタビューされました。
彼らの感想は、「子どもが外でよく遊んでいる。そして、親が実際に子どもと一緒に遊んでいるのは、とても新鮮」
「韓国では、多くの親はベンチに座っているか、スマホをさわっている」というものでした。
国別に一概に言えるものではありませんが、「デンマークの子は外遊びをよくする」ということを、外部の目によって裏付けるコメントでした。
季節を問わず1年中森で過ごす「森の幼稚園」は典型的な例でしょう。
雨風問わず外で遊べる雨具や雨靴は、市内の幼稚園でも必須です。
また、隣国スウェーデンの小学校で教えているイェニーに、子どもとデジタルの付き合い方を聞く機会がありました。
イェニーの働く公立小学校では、タブレットを授業に活用しています。
ただし、1人1台に配布されているわけではなく、上記2番のポイントのように、体験共有に重きが置かれているようです。
例えば、ある日子どもが登校すると、ホワイトボードに雪が降っている画像が流れていて、授業が始まるまで、子どもたちが映像の雪を捕まえて遊ぶ。
授業中には、各グループに1台タブレットが配られ、グループワークの課題を終えた後は回収される。
このような例や、日常生活から見えてくるものは、どこの国でも、どの家庭でも、デジタルの便利さ・面白さと、同時に共存する弊害に試行錯誤しているということ。
容易に陥りがちなデジタルにコントロールされるのではなく、自分で意識的にコントロールし、さらにそれを子どもに教えるのは、難しいテーマ。
我が家でも、娘の成長に連れて、そしてテクノロジーの発達に合わせて、家庭内でのルールやデジタル活用を見直していくことになるでしょう。
今後も論議されていくことは必至です。