スウェーデンには、Berghs School of Communicationという約70年の歴史を持つ広告専門学校があります。
ここのインタラクティブコミュニケーション学科生22人が2010年に、とある企画でカンヌを初めとする様々な賞を受賞しました。
恥ずかしながらつい最近知ったのですが、「これは面白いなぁ!」と感心してしまったのでご紹介したいと思います。
企画のタイトルは、『Don’t Tell Ashton(アシュトンに教えちゃダメ!)』。これがどういう意味なのかは後にご説明しますが、まずこの企画の目的は三つ:
①世界に向けて学校をPRすること。
②自分たちを業界の人々に向けてPRすること。
③シェアの力を試すこと。
彼らはこの三つの目的を達成するために、【ツイッターユーザーのプロフィール写真を沢山集めて世界初のモザイクアートを作ろう!】という企画を立てました。
このアートでは、参加するユーザーが抱えているフォロワー数と、本人のプロフィール写真のサイズが比例するようになっています。
なのでフォロワー数が多ければ多いほど、写真のサイズも大きくなる仕組みです。途中経過はこんな感じでした:
ここで、先ほどご紹介した企画の名前、Don’t Tell Ashtonの話に戻ります。
そもそも、アシュトン・カッチャーのことはご存知でしょうか。
彼はアメリカの俳優で、デミ・ムーアと結婚(そしてつい最近離婚…)したことで有名ですね。
では、なぜそんなアシュトンにこの企画のことを知られちゃまずいのか。
実は、彼はツイッターの神様と呼ばれるほどのツイッターヘビーユーザーで、史上始めて100万人フォロワーを超えたことでも有名なんです(今現在900万人超え!)。
そこでポイントとなるのが、彼のフォロワー数。
なんと、このモザイクアートを一発で完成させるには、アシュトンたった一人のフォロワー数で十分なんです。
なので、もし仮にこの企画のことがアシュトンの耳に入ってしまって、参加されちゃった日には、あっという間にそのアートが完成してしまう。彼の写真のみで埋まってしまう。
それじゃ、面白くないですよね。
ならば、ハッシュタグにDon’t Tell Ashtonと付けて、「アシュトンの力なしでモザイクアートを完成させよう!」とみんなに呼びかけたというわけです。
結果、ツイッターでこの企画を公表してからたったの3日間で、アートが完成してしまったそうです!
後日、この完成したアートはロサンジェルス在住のアシュトンの下へ届けられました。
この企画のことをそこで初めて知らされたアシュトンは、すかさずツイートをしてくれたそうです。
さて、冒頭にご説明したこの企画の三つの目的を振り返ります。果たして、無事達成することはできたのでしょうか。
まず一つ目は、世界に向けて学校のPRをすること。
これについては、まず学校主体ではなく生徒が主体となって学校をPRしている、というところがナイスですし、共感しやすいですよね。
佐藤尚之さんが「明日のコミュニケーション」で参考になることを述べられています:
ソーシャルメディアは「人」と「人」のつながりでできているから、そこで生活者とコミュニケーションをとりたいなら、企業といえども、ひとりの「人」としてそのつながりに入っていかないといけない。
続いて具体的な成果としては、以前までインタラクティブコミュニケーション学科の受講生はスウェーデン国内からの応募のみだったみたいですが、この企画実施後の新学期については、なんと14カ国から応募があったそうです。
これは、ツイッターを活用し、国境を越えて世界中の人々とコミュニケーションを取れたということが、このような成果に結びついたのではないでしょうか。
二つ目の目的は、自分たちを業界に売り込むこと。
具体的な成果は、この企画に携わった生徒の多くが卒業後に、世界中のエージェンシーから声がかかったこと(これは参考になる就活かも…?)
そして最後の目的は、シェアの力を試すこと。
これについては、アートワークに参加したツイッターユーザーのみならず、彼らのタイムラインに触れたフォロワーやアシュトンの当時500万人以上のフォロワーの多くが共感してリツイートをしてくれたことを想定すれば、十分シェアの力を実感できたのではないでしょうか。
これは正しくハイパークチコミですよね。
この言葉について、再び「明日のコミュニケーション」から引用しておきます:
①アクティブ関与層、潜在関与層、プチ関与層が関与して情報を広める
②受信者=発信者となり、すべての人が伝言ゲームに参加して情報を広める
③それぞれのソーシャルグラフに自動的かつ半自覚的に情報が拡散する
「① × ② × ③」という三つのかけ算により、ハイパークチコミとでも呼ぶしかないような、強烈な情報伝達が起きるのである。
やっぱり、Don’t Tell Ashtonというのをハッシュタグにしたところが、ものすごくスマートだなぁと思います!
制作に携わった皆さんは、今どこでどんな仕事をしているのでしょう?