もくじ
めずらしい切り口の北欧デザインのお話をご紹介
3/30(土)に開かれた「Christian Westphal(クリスチャン・ウェストフェール)氏を囲むヒュゲリなお茶会」で久しぶりにデンマーク語通訳をさせて頂きました。
デンマーク語だから教えてもらえたこと
ファッションや繊維関係のお話となると普段使わないボキャブラリーも多く、冷や汗の連続でした笑 でも気さくで穏やかなクリスチャンさんのおかげで、お茶会の通訳はなんとか無事終了。一緒に来日されていたクリスチャンさんの奥様にも「デンマーク語で話せて嬉しいわ」と言って頂けたのが何よりでした。
このお茶会に参加出来なかった方々から「どんな話をされたのですか?」とご質問を頂いたことと、個人的に納得のいく通訳が出来なかったという反省の意味を込めて、今回のお茶会で学んだことをテーマごとにまとめてみます(以下クリスチャンさんにお伺いしたことを抜粋)。
「デンマークデザインとファッションの歴史」
一般的にデンマークデザインというと「素材や原料を大切にする」「自然に敬意を払う」そして「自然との共生を考える」といったことがコンセプトとして挙げられます。しかしデンマークの服飾デザインに関しては、世界的に広く認知されている「シンプルモダンな北欧デザイン」とは違う部分があります。
デンマークのプロダクトデザインを見てみると、その特徴として「磁器と木」や「コンクリートとスチール」といった風に素材や原料を組み合わせることも挙げられます。この「組み合わせる」という発想は、日本からもインスピレーションを受けています。
また、同じヨーロッパでも、例えばイタリアの繊維業界の歴史と比べてみると「質の高い服飾デザイン」に対して、デンマークはまだまだ発展途上にあると言えます。その中でクリスチャンさんは伝統的なデンマークデザインに見られる「手作り・職人技」といった要素を取り入れています。
「デザイナーとしてのChristian Westphal」
クリスチャン・ウェストフェールさんはデンマークのコペンハーゲン出身で、デンマークのコリング(Kolding)とフランスのパリでファッションデザインを学ばれました。「技術とデザインはどちらも大切」とおっしゃるクリスチャンさんにとって、パリにいた頃の経験が、今の彼のデザインに一番大きな影響を与えているそうです。
デンマークは服飾デザインの歴史が浅いこともあり、クリスチャンさんはパリのデザイン学校(Chambre Syndicale de la Couture Parisienne)に通って技術を磨きました。その後、パリにてクリスチャン・ディオールのデザイナーや、エマニュエル・ウンガロのアトリエでキャリアを積んだ経験が「高い技術とデザインを融合させる」という今日のデンマーク人デザイナーChristian Westphal(クリスチャン・ウェストフェール)を作り上げています。
クリスチャンさんはデンマークの伝統的なデザインや職人技を活かしながら、それをモダンな形で表現することに取り組んでいます。
「Christian Westphalのこだわり」
「デンマークデザインの歴史を受け継ぎながら、モダンな作品を作る」というコンセプトを表している例が、今回のweareurope(ウエアヨーロッパ)で出展したスカートの模様にも見られます。
この模様はデンマークの農家に昔から見られる「刺しゅうの柄」にインスピレーションを受けてデザインされ、イタリアの布地メーカーと協力し、真珠色に輝く模様をプリントするという形で現代的に仕上げられました。
「デンマークの輸出産業にとって重要なもの」
今回のコレクションでクリスチャンさんはsagafursというフィンランドのキツネのファーを取り扱っているデンマークの会社と共同制作をしています。
デンマークはファー加工の歴史が長く、ファー製品はデンマークの4番目に大きな輸出品目となっています。クリスチャンさんはこれからのコレクションでも春夏秋冬問わずに、ファーを使った洋服を作るそうです。ファーの手作業での加工、動物と自然への敬意はもちろん忘れません。
「サステナブルデザインとヨーロッパでのものづくり」
彼のコレクションはコペンハーゲンでデザインされた後、イタリア、ポルトガル、デンマークで製造されます。ヨーロッパ内で製造することで、中国やバングラディシュなどで製造した時に比べて(地球環境に負担のかかる)輸送を減らすことが出来るからです。
また、ヨーロッパで製造する理由は他にも「自然環境に有害な物質を出さないこと」や「子どもを過酷な環境で働かさないこと」などの「より厳しい製造環境のチェックがあること」も挙げられます。
「デンマーク人デザイナーみんなが出来ているわけじゃない」
クリスチャンさんは自身のデザインを「サステナブルな(環境を壊さず地球に優しい)デザイン」とブランディングしているわけではありません。実際、全ての製造過程を完璧にサステナブルにするのは難しいからです。それでも彼にとって「サステナブルデザイン」は大切なコンセプトであり、「製造はヨーロッパ内で行う」といったように出来ることから実践されています。
製造コストの観点から、デンマーク人デザイナーみんなが「サステナブルデザイン」を実践出来ているわけではありません。ただ、クリスチャンさんがターゲットにしているマーケットは「品質や製造過程に価値を見出し、そのための対価を払いたい」と考えるお客様なので「サステナブルデザイン」を実践することが出来ています。
続きは後編で
簡単にまとめるつもりで書き起こしたお茶会の内容ですが、少し長くなってしまったので
- クリスチャンさんが単なる「ファッションデザイナー」にとどまらずに活躍出来る理由
- デンマークのデザインがなぜ有名になったのか
- デンマークの流行ファッションを見るにはどこがいい? などなど
まだまだ続くクリスチャンさんのヒュゲリなお話は、こちらの後編記事をどうぞ!
◎実は日本生まれ?デンマーク人デザイナーが語る北欧デザインとは(後編)