ヒュゲリなコラム

【北欧本紹介】これを読まずして『ノルウェーのデザイン』は語れない!

「北欧デザイン」を紹介した本は数多く出版されていますが、今回ご紹介するのは、北欧の中でもノルウェーにだけ焦点を当てた貴重な一冊『ノルウェーのデザイン―美しい風土と優れた家具・インテリア・グラフィックデザイン』です。

もくじ

ノルウェーデザインだけを紹介した貴重な一冊

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この本の著者は武蔵野美術大学名誉教授である島崎信(しまざき まこと)さん。海外デザイン研究員として日本人で初めてデンマーク王立芸術大学に所属し、帰国後北欧デザインを日本に紹介するため、書籍の出版、講演、展覧会の企画等、精力的に活動されています。

『ノルウェーのデザイン』の内容は、デザインに対する国の取り組みからはじまり、現在のデザイン、伝統、食、建築、工芸、インテリア、観光スポットの紹介に至るまで、デザインだけでなく国の歴史や文化的背景についてまで丁寧に触れられています。

 

「NORWEGIAN ICONS」の予習に最適!

6月21日からいよいよ開催されるノルウェーデザインの展覧会「NORWEGIAN ICONS(ノルウェージャン・アイコンズ)」に出品される作品も、この本に取り上げられています。(北欧ヒュゲリニュースの「NORWEGIAN ICONS」予告記事はこちら

その中でも私のお気に入りデザインは、これ!

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こちらはスヴェン・イーヴァル・デュステのデザインを紹介したページです。

左下のみどり色の椅子《ラミネッテ》は1964年に発売され、90万脚もの販売実績を誇ります。工業生産品としてデザインされ、生産ラインの効率を満たしてくれるようになった最初の椅子で、簡単な組み立て行程でコストを下げ、しかしフォルムと機能は質を下げていません。シンプルですが、温かみのあるゆるやかな曲線は、座る人を待ち構えているようにも見え、とても愛らしく感じます。

 

ノルウェーという国と人とが見えてくる

また、北欧デザインを知り尽くした島崎さんとノルウェーの建築設計事務所に勤めていた建築家・山田良(やまだ りょう)さんとの、「対談:ノルウェー建築の今」コーナーは、現在のノルウェー建築業界の様子や日本との違いなどを知ることができ、とても興味深い内容でした。

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特に印象的に感じた部分はこの箇所です。

島崎:北欧全般にいえることですが女性が働くのは、人口が少ない国にとって必然ですね。…(中略)…男性も育児や家事をする「生活者」として鍛えられたから、日用品に美しいデザインや機能的なものがたくさん誕生している。お皿を洗ったこともない男が、いくらデザイナーですって顔したって、機能的で使いやすくうつくしいものがデザインできるはずがないんです。

山田:確かにそうした社会背景が、北欧に美しい日用品や家具を生み出す土壌を育んだといえますね。

 

さらに、島崎さんはあとがきで、「ノルウェー人の気質が控えめで宣伝が不得手」と触れていました。一方の山田良さんも、対談の中で「がつがつしていないところが、ノルウェーの良さだと思う」と語られていました。

こういったことが今日までノルウェーデザインがあまり知られなかった理由の一つなのでしょう。でも、そんな控えめな性格だからこそ、誰にも媚びないデザインが作り上げられ、それがノルウェーデザインの大きな魅力なのでしょうね。

 

読む人に本当のノルウェーの姿を教えてくれるこちらの本。はじめから終わりまで、著者のノルウェーに対する温かな眼差しが感じられ、読み終わった頃にはノルウェーに深く惹かれていました。

この本は2007年に出版されたものなので、6年後の現在とは状況が変わっています。ノルウェーを代表する偉大な建築家スヴェレ・フェーンは2009年に亡くなっていたり、デザイン集団「ノルウェーセイズ」は解散していたりと…。ですが、この本を読むとノルウェーデザインの本質を知ることができます。北欧のデザインを黄金期から現在に至るまでずっと側で見つめて来られた島崎さんだからこそ書くことができた『ノルウェーのデザイン』を読まずして、ノルウェーのデザインは語れません!必読です。

 

[Information]
◎ノルウェーのデザイン 美しい風土と優れた家具・インテリア・グラフィックデザイン
著者:島崎信
出版社:誠文堂新光社
発売年月:2007年11月

ノルウェーのデザイン―美しい風土と優れた家具・インテリア・グラフィックデザイン