もくじ
デンマーク移住で気付いた幸せの根底にあるもの
デンマークが「世界一幸せな国」として知られるようになってから、そのワークライフバランス、手厚い社会保障や無料の教育など、様々な面が注目され、クロースアップされています。
わたし自身も、デンマークに仕事のために移住し、社会の一員として働き、生活をするなかで、その恩恵を受けてきました。
でも、長く住むに連れて、デンマーク人が幸せなのは、社会の仕組みや保障やヒュッゲだけではないということを、デンマーク人の同僚、上司、友人や出会った人を通じて感じるように。
そして、根底にある「人としての考え方、在り方」が大きく影響しているんだと考えるようになりました。
人生の転機に幼少期のトラウマと再会
その数年後に結婚、妊娠。
まさか自分がと驚くぐらい狂暴な力に飲み込まれ産前・産後うつになり、忘れたと思っていた幼少時から思春期のトラウマが沸き出し、とても辛い思いをしました。
妊娠中うつ病と診断された後、ここでもデンマークの社会保障の恩恵を受け、セラピーが始まりました。
初めの頃は、毎日の辛い気持ちを紛らわすサバイバルのためのセラピーでしたが、良くなるにつれて、一体どうしたら辛い過去と決別できるのか、そして自分の子どもには決してこのような体験や思いをさせないためにはどうやって子育てをしたらいいのかと、私のライフワークが始まります。
デンマークの「子どものプロ」との出会い
デンマークでは、子どもを守るための公共の支援や仕組みがしっかりしています。
その問題点も指摘されていますが、私はこのおかげで多方面から支援を受けることができました。
家族ぐるみでサポートを受ける中で、たくさんの有能で素晴らしいプロたちに支援を受け、アドバイスをもらい、論議する機会に恵まれました。
精神的に不安定な妊婦を出産後までサポートする助産師、小児・児童心理学者、新生児専門訪問看護師、保育士に加え、私個人もトラウマ専門心理学者やうつ病セラピストと、人生の転機になる出会いがありました。
ああ、私の小さいときにこんな大人がまわりにいたらどうだっただろうとよく考えます。
そうしてデンマークで子どもに関するプロたちと話をし、同時に自分の忘れたい幼少時代とも向き合うことで、行き着くべきところと絶対に繰り返してはいけないことがクリアになってきました。
そして、ああこれだ。「幸せで精神的に自立した大人」になるためには、幼少時の教育や自己形成が大きく影響しているんだとのつながりが見えてきたのです。
日本での忘れられない出来事
今でもたまに思い出す出来事があります。
まだ妊娠もしていなかった頃の話です。
日本への一時帰国で訪ねた市役所で順番を待っていると、ベビーカーに乗った4歳ぐらいの男の子を連れて70代半ばであろう女性がやってきました。
男の子はひどく泣いています。
どうしたのかなと見ていると、男の子はベビーカーのベルトに締め付けられ、もがきながら大泣きしています。
そんな子に対して女性は「うるさい!だまれ!」。
一向に男の子は泣きやまず、叫び続けていますが、その女性は知らん顔。そしてうるさい黙れを繰り返します。
市役所内では嫌な空気が流れていますが、職員も含め誰も何も言えません。
わたしも、心臓がドキドキして、これはいけないことだ。どうしよう、何かしたい。どうしようどうしようと思っているうちに、女性は手続きを終えて帰ってしまいました。
あの子は今どうしているんだろう。
あの時何か言葉をかけてあげられたら、何かしてあげられる勇気があったら、もしかしてあの子の人生は少しでも変わったかもしれない。
そう考えると心が痛みます。
繰り返してはいけない負のサイクル
いいことも悪いことも、親の影響は多大です。
辛い思いをした子どもが大人になり、無意識のうちに、その子どもに同じ事を繰り返してしまう悪のサイクル。
私はこのデンマークという地でそのサイクルを断ち切るチャンスに恵まれましたが、ここに来ることがなければ全く別の人生を送っていたでしょう。
子育ては100人に100通り。正解も不正解もありません。
私がこれから書いていく内容に賛同する人も、反対する人もどちらもいるでしょう。
でも、子どもに傷跡を残さない親や大人が少しでも増えたら、世の中はもっと幸せになるはずだと強く信じて疑いません。
私は教育の資格を持っているわけではありません。
でも、幸か不幸かうつ病になったおかげで、デンマークのプロたちを通じて、その教育の基礎となっている考えにどっぷり浸かる機会を与えられました。
そうして学んだこと、気づいたことを言葉にして発信することで、たった一人でも、心に傷を負わない子ども、大人が増えればそれ以上の喜びはありません。
今後書きたいテーマ
今後、色々な観点からデンマークの教育や家庭について紹介していきたいと思っています
- 完璧な母親とは
- ママがいいに決まってる?
- 保育園の教育方針
- パパの悩み
- 感情と向き合う
- 仕事と家庭の境界線
- 離婚と子ども
- 「ボーナスキッズ」
- 子供同士のケンカ
そのほか、追々、デンマーク人家庭や保育士に子育てについてのインタビューもしていきたいなと思っています。
他に何か読みたい内容があれば、ぜひ北欧ヒュゲリニュースのTwitterやお問い合わせページからリクエストしてください!