『デンマーク語のすすめ』も第3回。今回もデンマーク語の『音』について迫ります。第1回はデンマーク語の発音されない黙字、第2回はデンマーク語の¨r¨の発音、うがい音について触れました。

今回は北欧語の中でもデンマーク語にしか見られない「声門せばめ音」について見ていきます。いきなり難しい用語が出てきてしまいましたね。声門とは呼吸器の1つで、この声門の隙間から空気が流れることによって声帯が振動し、声が産み出されます。デンマーク語にはこの声門を狭める時に出る音が多く、これをストゥズ(stød=突き) と呼んでいます。デンマーク語ではこのstødを単語の区別に用いる特徴があります。

ではどんな音なのでしょうか?実はみなさんが咳き込む時の音に似ています。試しに少し咳をしてみてください。のどの辺りが少しキュッと締まった感覚がありませんか。デンマーク語を話す時には、この声門せばめ音に注意しながら話さなければなりません。ではさっそく次の動画を見ながら練習してみましょう。練習あるのみです。(1:52~くらいからご覧下さい。)

実はデンマーク語では同じ発音でも声門せばめ音の有無で単語を区別する特徴があります。例えば、hun(彼女:3人称単数代名詞)とhund(犬)やmor(お母さん)とmord(殺人)などなど…間違えると大変なことになりそうですね。もちろん聞き手も察してくれるとは思いますが(笑)。

この声門せばめ音が一体いつからデンマーク語にあるのかは明らかになっていません。1番古い記録では16世紀にスウェーデンの司教ヘミング・ガズ(Hemming Gadh)がデンマーク語について「他の国の人のように、 話すことに問題があるわけではないが、咳でもしたいのかと思わせるような感じで発音し、音を出す前にわざとのどで言葉を絞っているかのようだ。」と書き残しています。

いつから声門せばめ音が発達し始めたのかは未だに明らかになっていません。もし明らかになればデンマーク語・スウェーデン語・ノルウェー語がどのように発達していったのかがより深くわかりそうな気がします。

次回は閑話休題。デンマーク語とスウェーデン語の語彙の違いについて少し紹介します。

参考文献
Haugen, Einar. 1976. The Scandinavian Languages : an Introduction to their History. Faber and Faber Limited. London.