先日26日、毎年スウェーデン映画協会が制定する映画賞、スウェーデン・アカデミー賞(ゴールデン・ビートル賞 Guldbaggen)の結果が発表されました。
毎年注目の作品がノミネートされ、スウェーデン映画を語る上では欠かせないこちらの映画賞において、今年はある歴史的な快挙がなされました。
画像:Saga Becker historisk på “Guldbaggegalan” | Nöje | Expressen
こちらは今年度の最優秀主演女優賞を獲得したサーガ・ベッケル(Saga Becker)さん。この方、実は男性の体で心は女性という性同一性障害(トランスジェンダー)を抱えるトランスパーソンなのです。(北欧ではトランスジェンダーを抱える人のことをトランスパーソン/transpersonと呼びます。)
サーガさんは『ノンティング・モステ・ゴー・スンデル(nånting måste gå sönder 原題まま、日本未公開)』という、性同一性障害を抱え体は男性、心は女性というトランスパーソン、セバスチャンとゲイではないにもかかわらずセバスチャンに惹かれていく男性アンドレアスの関係を描いた映画でセバスチャン役を好演、見事最優秀主演女優賞に輝きました。トランスパーソンが最優秀賞を獲得するのは約50年続くスウェーデン・アカデミー賞において初めてのこと。この史上初の快挙はスウェーデン国内でも大きなニュースとなっています。
この受賞を受けてサーガさんは次のように語っています。
最初は、トランスパーソンとして出演することがとても嫌でした。しかし今、私は私自身としてここにいることができとても幸せです。すべての人が皆、ありのままでいるべきです。自分の存在に対して、申し訳ないと思うことや許しを請う必要はないのです。今私たちは大きな一歩を踏み出しました。
この日を忘れることはないでしょう。私たちは皆で共に世界をより良くしていくことができます。私はただ自分の活動を続けていくのみです。
引用:Historisk Guldbaggevinst för Saga Becker – DN.SE
ゲイやレズビアン、トランスパーソンに対する認識、社会制度がかなり進んでいるといわれる北欧、スウェーデンならではの快挙かもしれません。しかし日本をはじめ多くの地域ではまだその認識は浅く、差別の対象になってしまっていることもあるというのが現実です。彼女の快挙が多様性の認められる未来へのひとつの道筋となることを願うばかりです。
映画『nånting måste gå sönder』はスウェーデン国内だけでなく海外でも大きな反響を呼び世界中で上映されています。過激な性描写も多いですがトランスパーソンとして強く生きるセバスチャンはサーガさん本人と同じようにとても美しく、また普段のスウェーデンのイメージとは違う側面が見られる映画でもあります。日本での公開が待たれます!
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参考:
Saga Becker historisk på “Guldbaggegalan” | Nöje | Expressen
Historisk Guldbaggevinst för Saga Becker – DN.SE
Guldbaggen 2015