ヒュゲリなインタビュー

ノルウェーの魅力を絵本にした!デザイナーの伊藤文子さんにインタビュー

今回インタビューさせていただいたのは、日本とノルウェーで創作活動を行なっている伊藤文子さん。
2015年に、自身が活動しているノルウェーのハルダンゲル地方の魅力を詰め込んだ絵本『ノリーカ』を発表されました。

「本は嫌いだったから、絵本を作ったことに驚きです(笑)」と語る伊藤さんの活動の様子も合わせて、記事をお楽しみください。

もくじ

絵をいっぱい見てほしい

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(画像|Ayako Ito’s Portfolio

こちらの絵は、『ノリーカ』の最後のページ。伊藤さんが活動しているノルウェーのハルダンゲル地方の魅力が最も詰まったイラストです。

具体的には、どんなところがハルダンゲルなんですか?

– 私はここで主に織物をしていたのですが、たとえば右上の十字タペストリーは地域伝統のデザインです。
左の方にある靴下はヨンダルソッケンという編み物の靴下で、私の師匠のクリスティ・シントゥヴェイトがこのあたりの地域のデザインを参考に作ったものですね。彼女は私の滞在工房の持ち主でもあります。
同様に、真ん中に飾ってある服は、60年代70年代に彼女が展覧会に出したものをモチーフにしています。置いてる木馬なんかも、実際にこっちではタペストリーとあわせて飾ってありしてとてもかわいいんです。

絵本作りは大変でしたか?

– 大変でした・・・(笑)なかなか計画的に進まなくて、期限が迫っているのに全然できてない・・・!という感じでしたね。ノルウェー人と作業していると、彼らののんびりレベルが私と違うので、そのあたりの調整が難しかったです(笑)

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(デザイナーの伊藤文子さん)

ノルウェーは「ついで」でした

どういう経緯でノルウェーでの生活を始められたんですか?

– そもそもノルウェーを知ったのは、北欧にオーロラを見にいくツアーのついでで訪れたからなんです。
ノルウェーのトロムソという町に行ったんですけど、そこで地元のおじいさんから突然おこづかいをもらったんです(笑)驚きましたけど、それで一気にノルウェーが気になりはじめたんですよね。

そこから、ノルウェーでの活動に移っていくんですね?

– はい。でも、いきなりノルウェーでの生活になったわけではないんです。ふつうに日本で社会人をしているときに、今ノルウェーでお世話になっているクリスティ・シントゥヴェイトという織物作家の甥の方に、クリスティを紹介してもらいました。
それで私がクリスティに「一週間ほどノルウェーに滞在してみたいのだけど、どんな方法があるかな」という相談をしたら、「うちにいらっしゃいよ」とすごく軽い感じで招いてもらって。これにもビックリしたんですけど、ありがたくお邪魔することにしました。

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(ヨンダルの風景)

その一週間はどんな感じでしたか?

– 工房見学みたいな感じで、クリスティの活動の様子を見せてもらっていました。そこで「ああ、合ってるな」って感じたんです。
私は田舎が好きなんですよ。滞在しているヨンダルという町は、フィヨルドがすぐ近くにある、人口が1000人ぐらいのとても小さな所です。とても景色が良くて、こんな場所でモノづくりができるなんて素敵だなと思いました。
そして、その一週間の滞在を終えてから、今度はクリスティがやっている織物をやってみたくなりました。それで彼女に頼んでみたら、今度も簡単に「いいわよ」と(笑)

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(工房の様子)

あたたかさのある、楽しい気持ちになってもらえたら

そのときからノルウェーで活動を始めたんですね。

– はい。でも、ずっとノルウェーにいるのではなく、一年のうちの一時期です。長いときだと、一回の滞在で3ヶ月ぐらいノルウェーにいます。
通い始めて大体10年になります。その間に一度だけ、2年間こちらに住んだことがあって、私はそのおかげで『ノリーカ』という絵本が作れたのだと思っています。

日本とノルウェーで活動内容は違いますか?

– 少し違います。創作をしているという点では同じですが、日本とノルウェーでは時間の流れ方が違うので、やること、やりたいことが変わるんです。
日本だと、テキパキとスケジュールに沿って活動しますが、ノルウェーだとのんびりのびのび創作をするというイメージです。

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(ノルウェーでのKristi Skintveit・Johann Hartman Sand展覧会の様子)

今後はノルウェーに住んで活動する予定ですか?

– 今のところ、その予定はありません。日本人だから、ベースは日本においておきたいという気持ちがありますね。
それにノルウェーにいると「自分は外国人だ、ノルウェー人にはなれない」という感覚もあります。その感覚を通して、自分を客観的に見つめ直して次の創作に生かしたりもできるので、今は日本もノルウェーも両方必要だなと感じています。

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(ノルウェーでのKristi Skintveit・Johann Hartman Sand展覧会の様子)

創作における伊藤さんらしさは、どんなところにありますか?

– 「作品を通じて、何かしらあたたかさや楽しさを感じてもらえたら」というのはあります。それはたとえば、生きていることや命そのものとかと関わってくるんですけど、それは実際に私がノルウェーで感じたものなんです。

今後の活動ではどんなことを目指していきますか?

– 今言ったような、あたたかさや楽しさ、あるいは私が経験した暮らしやノルウェーでの感動、伝統の織物なんかも、日本の皆さんに伝えていきたいなと思っています。
私は「誰かのために何かを作る」というのが大好きなので、たとえば『ノリーカ』でノルウェーの素晴らしさを感じてもらえたら、とても嬉しいです。

伊藤文子さん、ありがとうございました!
伊藤さんの作品やノルウェーでの生活について書かれているブログはこちら、『ノリーカ』公式Facebookページはこちらからご覧いただけます。