北欧現地ニュース

職場が学童になる?学校ストライキ中に起きた驚きの出来事

画像:Health&Safety Handbook

2013年に、歴史的と言われる出来事がありました。

教師の労働時間や条件をめぐって、教師労働組合(Denmarks Laererforening)と政府(正確に言うとKommunernes Landsforeningですが、詳しい説明は割愛します)が合意に至らず、50,000人もの教師が出勤を禁止される「ロックアウト」の状態となり、全国小中校の生徒約550,000人が、4週間もの間、自宅待機を強いられました。

今や、コロナによる影響で、予想のつかない自宅待機に驚く人はいなくなりましたが、当時はこの規模の「急停止」は前代未聞。

また、生徒の自宅待機といっても、親たちの仕事は通常通りで、共働き率が非常に高いデンマークでは、通常日中の家は空っぽ。

小さい子を一人で留守番させるわけにもいきませんが、とは言え、親たちは急に仕事を休むわけにもいきません。

加えて、労働組合と政府がいつ条件合意できるかの目処も立たず、ロックアウトの期間もどれだけ続くかわからないという宙ぶらりんの期間が続きました。

両親に頼ったり、有給を活用したり、自宅勤務をしたりする人もいるなか、多数のオフィス勤務の親たちは、会社に子どもを連れていくという選択をしました。

私には当時子どもがいなかったので、何が起こっているか実感がわかない出来事でしたが、そんな私でも気づくほど社内で変化があったので、良く覚えています。

当時私が働いていたのは、ベンチャーから急成長中のIT企業です。

社内の雰囲気もカジュアルで、ビルの入り口にセキュリティーもなく、ゲスト登録をしなくても来客を連れてこられるようなオフィスでした。

ロックアウトが始まった最初のころは、「なんだかちらほら子どもを見かけるな」というくらいでしたが、いつ終わるか見当がつかないロックアウトが続くうちに、段々子どもの数が目に見えて増えてきました。

Wiiやテーブルサッカーが置いてあるゲームルームは子供たち専用になり、ランチを食べる食堂にも子どもがうじゃうじゃ。

当時の私の上司は、自宅勤務をしながら、ミーティングのために会社に出てきたのですが、そのときは小学校低学年の子ども同伴。

ミーティング中は、子どもがテーブルの向かい側に座っていて、話しかけてくるたびにミーティングが中断される、ということもありました。

そして、3時過ぎにはオフィスが空っぽ。

これには衝撃をうけました。

特殊な状況ということもありますが、ここまで仕事とプライベートの線引きが薄いことは、今まで体験したことがなかったからです。

むしろわたしは、日本で働いているときは、仕事は仕事、プライべートはプライベート、とクリアな線引きをしていました。

同僚や上司の家族や恋人にも、業務時間内、時間外にも会ったことはありません。

でも、デンマークのその職場では、ロックアウト期間以外でも、みな気軽に家族を会社に連れてきていました。

毎年あるクリスマスパーティーも、妻・夫や恋人、パートナー同伴。

海外長期出張に、航空券代自腹でパートナーを連れてくる人もいて、社内の夕食にも参加。

料理とワインが趣味の上司の自宅に何度か招かれ、手料理をごちそうになったこともあります。

最初は驚いていた私も、そのうち彼氏をフライデーバーに連れていったり、日本から訪問してきた母に会社内を案内したりするようになりました。

そうしてプライベートの境目が曖昧になっても、仕事や人間関係に全く影響はありませんでした。

今までのクリアな線引きはなんだったのか、どうして白黒つけたかったのかの理由もわからなくなりました。

プライベートを優先するデンマークでは、オンとオフの境目が薄い。

終始リラックスした環境の中で働くデンマーク人とその暮らしが、「人間らしいワークライフバランス」に繋がるのでしょう。

人を雇う側の会社も、雇われる側の社員も、幸せなプライベートがあってこそいい仕事ができる、と理解しているんだなと思います。